ジャック・ヨーヴィル『ベルベットビースト』

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 帝都アルトドルフは今、女ばかりを狙った残忍な連続殺人犯”獣”の話題で持ちきりだった。扇動家エフィモヴィッチが”獣”の正体は貴族だと民衆を煽り立てたため、”獣”を起因とした政情不安は暴動寸前にまで発展せんとしていた。そのような状況下、事態を憂慮したズーデンランド選帝侯ヨハン・フォン・メクレンベルク男爵は、独自に調査を開始した。若く正義感にあふれる警備兵エルセッザー、一匹狼の元警備隊長ハラルド、シグマー教団から派遣されてきた心霊鑑定士ロザンナらを味方に付け、”獣”を追跡し始する。さまざまな人々の思惑が絡み合い、緊張と混迷の色を深めていく状況の中、彼らが見出した真犯人は…。

 というわけで、表紙は他の2冊と同じジュヌヴィエーヴなのに、ジュヌヴィエーヴ系列とは世界観を同じくするだけで特にジュヌヴィエーヴとは関係ない(笑)ジャック・ヨーヴィルことキム・ニューマン謹製のウォーハンマーノベル第3弾。ごめんなさい、読み終えたのはずいぶん前だったんだけど、単純に感想書くのサボってました。ぺこり。だが、さすがにキム・ニューマン作品をこれ以上放置しておくわけにもいかん。キム・ニューマンだからな!『The Man from the Diogenes Club』、誰か邦訳してよ…っていうか梶元靖子超希望。理由は後述。

 で、『ベルベットビースト』ですが…うむ、やはり「ウォーハンマー版ドラキュラ紀元」と言わざるを得ない(笑)。かたや切り裂きジャック、かたや”獣”、貴族階級と下層民の軋轢あるしジョン・ジェイゴ(風のエフィモヴィッチ)いるし、ニューマンお得意の群像劇やら状況描写もあいまって、帝都アルトドルフが何度読んでもロンドンにしか思えません(笑)。とはいえ、ジュヌヴィエーヴの物語とは基本的に独立している分、作品単体を先入観なしに楽しめるし、そうなるとむしろ、いつものキム・ニューマン印の鉄板レベル保証済みの話運びを堪能できるというもの。”獣”の正体も、正体割った後でさらに一ひねり加えるという余裕っぷり。個人的には、今回まとめて出た3冊のウォーハンマーノベルのうちでは、かなりのお気に入りの部類に入るです。だが、今回はニューマンの力量とは全然別の理由で物語を堪能し切ることが難しいのだけれど…理由はこれから。

 で、その理由ですが、噂には聞いていたけど、この巻は特に翻訳が酷い。本当に酷い。今回HJ文庫Gで出た他のウォーハンマーノベルも、他の感想だと翻訳酷い酷いという言及がかなりの確率であるんだけど、ワタシ自身はといえば、確かに引っかかるものはあるにせよ、別に特別あげつらうほどのことでもないよなぁ、てな感じだったのよ(同一作品中における固有名詞の統一、みたいな基本中の基本は別にして。できてなかったよね、『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』では)。でも今回はアカン。遂に「何度読んでも何が言いたいのかさっぱり分からない」というレベルのパートが出現するようになってしまった(笑)。誰か、第四部冒頭の数ページをどう解釈していいのか分かりやすく解説してくださいよひっくえぐえぐ。前後の文脈から、暴動の原因となった事象について言及しているのだろう、というところまでは想像付くんだけど、具体的な文章レベルまで降りると、読めば読むほど混乱してくるというECMジャミングな翻訳文。訳が難しいというのは容易に想像がつくけれど、せめて小説文として意味が通る程度までには頑張ってください…(涙)。

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