2008年2月アーカイブ

 というわけで、横浜への引越しの準備でてんやわんやのわたくし。2月に入るまで引越しの詳細がちっとも判明しなかったくせに、いざ話が動き出したら、いきなり2週間後には現地入りしてくれとか泣きそうです。しかもそのうち後半1週間(というのは、もう今週のことなんですが)は出張ベースのホテル住まいで現地入りしてくれとか、ゆえにこの連休しか荷造りの暇がないとかマジ泣きそうです。しかも、いい家具といい電化製品で、もはやこじま御殿と化している今の住まいよサヨウナラ、と、電気・ガス・水道を止める手続きをして、不動産屋に部屋の解約通知書を出した直後に「実は横浜の寮の部屋代は会社から出ます!実は頻繁に出向先と元職場を往復してもらうから、今の部屋はそのまま維持しておいて!」とか言われて泣きそうです。そういうことは最初に言ってください...(涙)。部屋の解約はなんとか差し止めたけど、電気・ガス・水道の停止キャンセルは平日になってからでないと窓口が開かないので、就業中に抜け出して窓口に電話するしかなかろうなあ。くすん。
 そして、人事の書類不備により、横浜の寮の部屋番号が未だに決定していないという罠。それが何を意味するかというと、新住所が一意に特定で金ということだ!ADSL用の電話移転の手続きができねぇよ!郵便物の転送も!ネット接続がアンビリカル級の生存条件であるところのワタシは、ネットが切れたら余裕で死ねます。週明けにはさすがに部屋番号が判明するだろうけど、前回、寮から今の部屋に移ったときには、移転に少なくとも2週間はかかってたはずなので、今回の引越し後も最低1週間はネット接続不可のはず。泣くぞ。

 ...というわけで、これから最低2週間ほど、一時的にネットから消失いたします。掲示板だけは、なんとか携帯経由で見られるし、長文でなければ書けるので、何かあったらそちらにどうぞ。
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 この世には映画や小説で言われているようなオカルトは存在しない。だが、ある種の知られざる数学的定理――NP完全問題をP完全問題に変換して、どんな問題でも多項式時間内に解けるようにしてしまうチューリング定理や、根拠の無い事象にまで確率を設定してしまえるような推論など――は、解くだけで時空に影響を及ぼす。適切な手段と組み合わせれば、時空に大穴を開けて、お隣の宇宙から招かれざる隣人を招いてしまいかねないのだ。ある者は、単なる数学的探究心からたまたま定理にたどり着くことで宇宙的危機を誘発し、またある者は、邪な目的から、あえて禁断の数式に手を染める。だが偶発にせよ故意にせよ、それらの事象は未然に防がれている。なぜならば、政府組織の一部には、それらを秘密裏に処理する部署があるからだ。そのひとつが、英国政府が設立した組織<ランドリー>である…。
 ボブ・ハワードは<ランドリー>の新人エージェント。彼自身、幾何曲線反復法を考え付いて、あやうくバーミンガムを全滅させそうになったところを<ランドリー>にスカウトされた経歴の持ち主だが、そんな彼の現場での初仕事は、アメリカから帰国できなくなっている大学教授モーとの接触。モーもまた、意図せずして危険な確率工学に手を出していたため、アメリカ政府から出国を禁止されていたのだ。どうということはない任務のはずだったが、オカルトを背景にした中東のテロリストグループがモーを拉致したことで事態は一変する。モーの奪還には成功したものの、テログループの背景には、ナチスの魔術研究機関アーネンエルベの関与も推察された。真相究明のため、ボブとモーは、アーネンエルベの遺物が保管されている、アムステルダムの残虐行為記録保管所へと向かうが…。表題作『残虐行為記録保管所』、および、意外なものに潜んでいた恐怖が騒動を引き起こすスラップスティック中編『コンクリート・ジャングル』の二編を収録。

 つうか、チャールズ・ストロスが新作出してるなんてちーとも情報キャッチできてなかったですよワタシは!『シンギュラリティ・スカイ』でワタシの心を鷲掴みにしたストロスの新作なのに、普段チェックがおろそかになりがちなハードカバーであるという点と、今まで邦訳されてきた作品とは毛色が違いすぎる表紙であ、実は一応『アイアン・サンライズ』も読了してます。最初のノヴァ輻射が広がる描写が一番の見所で、物語はというと、主人公たちが結構絶望的な状況に追い込まれて、これどうやって逆転するのかと思ってたら、主人公キレて悪役を突き飛ばす!その先にはたまたま先の尖った何かが!みたいな終わり方をしてかなり吹いた覚えがあります。いや面白かったけど!
 てなわけで、基本チャールズ・ストロスは変なハナシを書かせると真骨頂だと把握しているんですが(笑)、この『残虐行為記録保管所』もなかなかに変なハナシで、ワタシは大変気に入りましたです。「SF+クトゥルー+スパイスリラー」という売り口上は確かにその通りなんですが、ストロスなのでストイックな雰囲気になるはずもなく。SFは確かにその通り。というか、現代に魔法、という作品も数あれど、この作品は描写が馴染みすぎてて逆に新鮮(笑)。つうか、魔法とか異界の解説がただの理系オタクの戯言にしか見えなくてステキです。クトゥルーという点に関しては名義借りの側面が強いですが、実は意外と「見るなよ!絶対に見るなよ!みーたーなー、ぎゃああぁぁぁぁ…」というクトゥルー神話の基本は踏まえていたりするのでOK。禁断の蔵書が満載の書庫とか出てきます。嘘は言ってません。そしてスパイスリラーに至っては…<ランドリー>、諜報機関っつうより、普通に役所だろこれ(笑)。『コンクリート・ジャングル』の黒幕とか酷すぎて涙が出てきます(注:褒めてます)。主人公は一応戦闘訓練とかも受けてるらしいんですが、実際やってることは良識ある理系コンピュータ馬鹿。スバラシイ。
 だのに、『残虐行為記録保管所』のクライマックスの寂寥描写はちょっとぞっとしたりするんだな。黒幕の一ひねり方もちょっと感心してしまったし。

 『シンギュラリティ・スカイ』『アイアン・サンライズ』のエシャトンシリーズとは別に、新たに楽しみになってしまったストロスの新シリーズ。風変わりなホラーが読みたい人も、軽妙なユーモアSFが読みたい人も両方イケるのでオススメです。
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