ジョン・スコルジー『遠すぎた星 老人と宇宙2』

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 人類がコロニー連合として宇宙に進出し、宇宙の他種族との衝突状態に突入してから幾年月。現在、人類は水面下で危機的状況にあった。人類に敵対的な三種族が連合を組み、密かに人類に対する総攻撃を計画しているという情報をキャッチしたのだ。三種族の同時攻撃を防衛する能力は、今の人類にはないのだ。だが、人類にとって不可解だったのは、そのうちの二種族は、最近まで敵対関係にあったという事実だった。しかも、その裏には、意識研究のリーダーであり、三種族側に寝返った天才科学者チャールズ・ブーティンが噛んでいるらしい。対策に窮したコロニー防衛軍は、意識研究の過程で偶然残されていたブーティン自身の意識記録と、ブーティンの遺伝子情報を元に、ブーティンの意識を再現したと思われるクローン、ジェレド・ディラックを作り出した。表向きは、ゴースト部隊――防衛軍に志願したものの、軍務に就く前に死亡した地球人のクローンから構成される部隊――の隊員として。だが、期待とは異なり、ディラックはブーティン本人としては蘇らなかったため、やがてブーティンの記憶が蘇ることを期待されたまま、ディラックはそのままゴースト部隊として配属された。ディラックはゴースト部隊員として様々な経験を積んでいくが、やがて...。

 というわけで、ヨボヨボな爺さん婆さんが超身体機能を有した美男美女にリサイクルされて宇宙の戦士、という、斬新すぎるんだかベタすぎて誰も手をつけてなかったのか判断つきかねる設定だが面白すぎたのでまあよし、な前作『老人と宇宙』で、一躍メインストリームに躍り出てしまったジョン・スコルジーの新作が出てきたので速攻ゲット。前作の老人リサイクル前後は本当に笑わせてもらったからなぁ。ただ、その後の展開も水準以上ではあったものの、何せ前半のじじいリサイクル(だんだん呼び方が雑になってるぞわし!)が面白すぎたのでインパクトに欠ける感はあったりなかったりしたのもまた事実。早い話が、スコルジーは一発屋じゃないかと疑っていたのですよわし。

 などと思いつつ買ってみた続編のこれ『遠すぎた星 老人と宇宙2』ですが...面白いじゃないかスコルジー!前作のじじいリサイクルのような新味のある設定描写、というと、今回はゴースト部隊員の速成教育課程がそれに相当するです。肉体を急速に成人相当まで育てたクローン兵士、という意味では割とよく見る設定ではあるけど、この作品のように、育成過程に説得力ある描写をした作品は意外とあんまりないイメージ。前作の時点でゴースト部隊の異様さ(年齢的な意味で)は既に描写されていたんだけど、今作でちゃんとその点に描写的な裏付けが成されました。ブレインパル万歳!
 ストーリー的にも、ちゃんとディラックの中に潜むブーティンの意識は目覚めるのか、オリジナルのブーティンは何故人類を裏切ったのか、人類はどのように三種族連合の攻撃を凌ぐのか...といった要素や、前作で活躍したジェーン・セーガンが今作でも重要な役回りだったりと、前作読者へのサービスも怠らない(でも前作読んでなくても別に問題なしの)描写で、読み手の興味を惹きつつ、人物描写ありアクションありと実にしっかりしたもの。いや、ミリタリーSFって、酷いものはホントに酷いのよ...。未来でただ戦ってりゃいいんだろ的なのが結構あってですね...ひっくえぐえぐ。でもこれだけしっかり描けてれば全く問題ナッシング。前作は、もしかしたらスコルジー自身も、ストーリー的な観点では、じじいリサイクルのインパクトを持てあまし気味だったのかも知れんのう。わたくしとしては、これでスコルジーは一発屋では無かったと判断いたしますです。そりゃ歴史に残る傑作じゃないけど、昨今、当たり前の娯楽作品を当たり前に供給できる作家ってのはそれだけで貴重なのよ...。

 というわけで、安心して楽しめる作家さんがまた一人。面白いよ!あと、ガメランの名前の中にちゃんとストロスが入っている...やはり君とは仲良くなれそうだッ!ガシイッ(握手の音)!

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