『ダークナイト』

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 いや確かにわたしゃ『バットマン・ビギンズ』大好き人間ですよ。でもさすがに、今回の『ダークナイト』が、本土アメリカでは各種興行成績記録を片っ端から塗り替え中で歴代トップの『タイタニック』にすら迫る勢い、しかも批評家筋からも大絶賛、とか聞くと、いやそれは本当なのか、と疑いたくもなるもの。だって、アメリカだよ?シワなし超大作が大好きなお国柄だよ?全米第1位、なんつったら、観客のウケはともかく、批評家からの評価は、だいたいが「批評家からの評判も上々で...」くらいじゃないのさ。だのに『ダークナイト』では大絶賛とかあり得ないデスよ。お前ら急にアメコミスキーになったのか。しかも上映時間超長い(2時間半以上)ですよ?ワタシ内最高アクション超大作で、何度見ても超最高!な『ザ・ロック』ですら、上映時間は自重しろとかねがね思ってましたが、その『ザ・ロック』でさえ上映時間は2時間16分。それよりさらに長いとか、一体何があったのかと。つか、だれるよ、それ絶対!大丈夫なのかクリストファー・ノーラン!既に大丈夫じゃなくなっちゃったよヒース・レジャー(涙)!
 ...とはいえ、前作『バットマン・ビギンズ』は、コウモリコスチュームに身を包んだ一見頭のアレな人、の誕生秘話を、きっちり丁寧に描いていくというリアリズム重視に惹かれたわけで、もしかしたら海の向こうの驀進ぶりも、ただの話題先行だけじゃないのかもにゃあ...と思っていたら、月日は流れて、いよいよ日本でも先行上映ですよ。もちろん朝イチで劇場に突貫ですよ。好きだからな!

 で、結局どうだったかというと。

 これは、本当に、すごい。

 152分が全く長く感じられない圧倒的な密度の濃さ。エンターテイメントとしても一級品なだけでなく、見終わった後で、映画偏差値40のワタシですら、作品のテーマについていろいろ考えさせられる、という希有な経験をすることに。善と悪、正義と邪悪とか、最近では境目がどんどん曖昧になっている概念について、真っ向から取り組んだあげく、それが裏テーマになるどころか、映画のエンターテイメント性に直結しているという、結構とんでもない映画だったのだ、これは。見終わると興行収入バカ売れ中とか、批評家大絶賛とか、完全に腑に落ちてしまったですよ。これはすごい。

 この映画の最大の勝因は、ひとえにジョーカーのキャラクター造形に尽きる。前のバートン版バットマン映画の、ジャック・ニコルソンのジョーカーは、ワタシのあやふやな記憶の中では、派手なメイクのガイキチさん、という印象だけだったんだけど、今回のヒースジョーカーは、やっぱりガイキチさん(いまから手品でこの鉛筆を消すぞ~、ほら消えた~!)ではあるけど、それに加えて、映画全編を通して、常に周囲の登場人物たちに対して、究極の選択を突きつけ続けるという最悪の敵なのだ。バットマンですらその影響からは逃れられていないし、完全に飲まれて堕落してしまう人物すらいるこの怖さ。図らずも、ジョーカーを通して、バットマンの正義の在り方自体が問われてしまうというこの展開の妙。「俺はお前を殺さない。お前がいなけりゃ、俺はちんけな強盗に逆戻りだ」という、バットマンの存在が、逆に自分の存在を際だたせていることに自覚的な台詞が怖すぎます。バットマンにとっては絶望的な台詞だろうなぁ...。このジョーカーの素晴らしさは、ヒース・レジャーの鬼気迫る演技もさることながら、脚本そのものの勝利でもあると思うわたくし。
 では全編そんな『セブン』みたいな病んだキリキリ感ばっかりなのか、というと全然そんなことはなく、ちゃんと要所要所では超大作エンターテイメントしてるのがまた素晴らしい。バットマンin香港とか意外すぎるシーケンスもあったり...というか、スカイフックでの離脱が超人過ぎですウェイン産業の会長さン(笑)!普通の映画だったらクライマックスの、ジョーカーとのカーチェイスもまだ映画的には中盤という全編クライマックスっぷり。もちろん前作で大活躍のタンブラーさんも大活躍だ!だが今回は新メカもちゃんと登場!

 バットポッド!パットポッド!

 とりあえず初お披露目シーンで笑い死にそうに。お前はナイトストライカーSステージか(笑)!だが走りそうにない姿のバイクがちゃんと走ってる上に、驚異の180度ターンをかましたりして超カッコいいので許します。最高!っていうか、これ、タンブラーに引き続き、ちゃんと走行するモデルを作ったというのが凄すぎます。どこにエンジン入ってるんだコレ。でもちゃんと乗りこなせるのが専属のスタントマンだけというピーキーぶり。素晴らしい。
 そしてもうひとつ、バットらしいギミックが登場するんだけど内緒。バットマン的にも、ジョーカーに追い詰められた末の最後の手段だった、とだけ。

 それにしても、面白い映画というだけでなく、いい映画だったなぁ...。最後にバットマンが下す決断から、タイトルの「ダークナイト」につながるラストの流れもこれまたいい。バットマン好きであろうとなかろうとオススメ!

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