トマス・ウィーラー『神秘結社アルカーヌム』

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 20世紀初頭のイギリス。ある夜、大英博物館近くで、老人が車に轢かれて事故死した。彼――コンスタンティン・デュヴァルは、神秘学の権威であり、ヨーロッパの上流社会に大きな影響力を持っていた。かつて長年彼と行動を共にしていたコナン・ドイルは、その死に不審を抱き、その過程で、禁断の知識が記された幻の書物『エノクの書』が事件に関わっていることを知る。裏でうごめく陰謀を打破するために、かつてデュヴァルが組織し、ドイルも属していた組織・神秘結社アルカーヌムを再結成するときがきたのだ。かつての仲間を集めるため、ニューヨークへと飛ぶドイル。だが折しも、ニューヨークでは謎の惨殺事件が続発し、禁書を初めとする悪魔学の知識に長けた、かつてのアルカーヌムの仲間の一人、ラヴクラフトはその猟期事件の犯人として精神病院に収監されてしまっていた。仲間の一人フーディーニは非協力的であり、孤独な戦いを強いられるドイル。エノクの書にまつわる今回の事件の謎を解くことができるのか...。

 というわけで、久々にワタシの守備範囲内のジャンルで出てきたトマス・ウィーラーの『神秘結社アルカーヌム』は、ホラー版の特攻野郎Aチーム(AはアルカーヌムのA)みたいな内容。特攻野郎Aチームの内訳は、言わずと知れたコナン・ドイルに、ある方面には言わずと知れまくっているH・P・ラヴクラフト、世紀の脱出王フーディーニに、ヴードゥの女王マリー・ラヴォー!......最後誰?まあそれはともかく、悪魔と言えばお約束のアレイスター・クロウリーも出てきて、虚実ない交ぜにしたジェットコースターホラーが!......ということは別になく、お話は極めて普通に、丁寧に進行していきます。つうか、普通によくできた神秘学系ホラー。この本を読もうという人でさすがにコナン・ドイルを知らんという人はいないと思うけど、ラヴクラフト誰?とかクロウリー誰?という人も手を出してエニシンオッケーです。マリー・ラヴォー誰、という人はワタシと握手だ。
 しかし、いわゆるクトゥルー神話よりHPL原神話の方が好き、という人間にとって、この作品におけるH・P・ラヴクラフトの違和感っぷりはガチ。キリスト教的世界観の神と悪魔における悪魔学の泰斗、という設定だけで既に、コズミックホラーとは相容れなさそうな違和感をがもがもと醸し出しているラヴクラフトさんですが、他にも、

 ・変なガジェットを取り出して悪魔探知にいそしむラヴクラフト(特殊装備!エルトダウンシャーズ!!)
 ・キレて悪魔相手に大立ち回りを演じるラヴクラフト
 ・行きがかり上、つい少女の入浴シーンを覗いてしまいHER、HERするラヴクラフト


 ...ラヴクラフトさン、あんた一体どこへ行こうとしているんだ......(涙)。

 そんなですが、最近欠乏気味だったホラー分を補給するにはうってつけの一品。結論としては、全米マジシャン協会最強、ということで(笑)。

コメント(1)

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