ジョー・ヒル『20世紀の幽霊たち』

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 ジョー・ヒル...誰?というわけで、本屋でたまたま見つけて衝動的に買ってみた短編集。血まみれの女の幽霊が出るという映画館に関わった男の人生を描く『20世紀の幽霊』、昆虫に変身した男を描く『蝗(いなご)の歌をきくがよい』、発達障害の少年が作り出した段ボールの迷宮にまつわる怪異を描く『自発的入院』などを収録した怪奇幻想短編集。

 ...ということになっているけど、とりあえず言っておきたいことが...。これ、収録作品の3分の1くらい(体感)が、怪奇関係ない普通の小説に思えるんですが...。死体とか血とか出てくるけど、話の本筋は普通(というのは、幻想でもSFでもない、という意味での普通)の短編、みたいなのが結構収録されてるよね...。発達障害の少年と父親との交流を描く『うちよりここのほうが』とか、無賃乗車で放浪する少年の『寡婦の朝食』とか、離婚した妻子を訪ねに行くブルーカラーの男の話『救われしもの』とか。風船人間が普通に生活している世界、という突拍子もない前提を除いたら、『ポップ・アート』もそうと言えるかも。ヲヲヲ~!ワタシが日頃読みもしなければ興味もない世界の話を!ある意味こっちのほうがあなたの知らない世界だよ!SFとホラーが主戦場の人間にこんなものを!うわぁぁぁぁん!

 ...とはいえ、どれもこれも、読んだ感じでは、しっかりとした語り口で、確かにこれがデビュー作とは思えない安定っぷり。気に入った作品も結構あったわけで。作者不詳の怪奇小説の作者を捜すアンソロジー作家の顛末『年間ホラー傑作選』や、表題作『20世紀の幽霊』は気に入ったし、上にも書いた『自発的入院』とかはなかなか怖い作品。個人的に、一番気に入ったのは『アブラハムの息子たち』。アブラハムっつったら普通は「あっぶらは~むに~は7にんのこっ、ひとりはのっぽであとはちび~」の方のアブラハムだとばかり思ってたら、全然違うけどよく知ってるアブラハムでビビりました。アブラハムっちゅうか、エイブラハムやね。確かにこんなんなりそうだ、あの男は...。

 そんなこんなで、なかなかに完成度の高い一品ではあります。ところで、あとがきでジョー・ヒルの家族構成を見てすげー驚いたわたくし。サラブレット過ぎるだろジョー・ヒル...。

コメント(2)

加藤隆史 :

おひさしぶりです。
ジョー・ヒルの素性を知らずにこの本を読んだ人を初めて見ましたよ。ええ。(笑)

Haster :

私の尊敬する赤兜のヒライ塾長によると、読む前はヒルは○○の子供って印象だったそうですが、読んだあとは○○はヒルの親って変わったそうでつw

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