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 人類がコロニー連合として宇宙に進出し、宇宙の他種族との衝突状態に突入してから幾年月。現在、人類は水面下で危機的状況にあった。人類に敵対的な三種族が連合を組み、密かに人類に対する総攻撃を計画しているという情報をキャッチしたのだ。三種族の同時攻撃を防衛する能力は、今の人類にはないのだ。だが、人類にとって不可解だったのは、そのうちの二種族は、最近まで敵対関係にあったという事実だった。しかも、その裏には、意識研究のリーダーであり、三種族側に寝返った天才科学者チャールズ・ブーティンが噛んでいるらしい。対策に窮したコロニー防衛軍は、意識研究の過程で偶然残されていたブーティン自身の意識記録と、ブーティンの遺伝子情報を元に、ブーティンの意識を再現したと思われるクローン、ジェレド・ディラックを作り出した。表向きは、ゴースト部隊――防衛軍に志願したものの、軍務に就く前に死亡した地球人のクローンから構成される部隊――の隊員として。だが、期待とは異なり、ディラックはブーティン本人としては蘇らなかったため、やがてブーティンの記憶が蘇ることを期待されたまま、ディラックはそのままゴースト部隊として配属された。ディラックはゴースト部隊員として様々な経験を積んでいくが、やがて...。

 というわけで、ヨボヨボな爺さん婆さんが超身体機能を有した美男美女にリサイクルされて宇宙の戦士、という、斬新すぎるんだかベタすぎて誰も手をつけてなかったのか判断つきかねる設定だが面白すぎたのでまあよし、な前作『老人と宇宙』で、一躍メインストリームに躍り出てしまったジョン・スコルジーの新作が出てきたので速攻ゲット。前作の老人リサイクル前後は本当に笑わせてもらったからなぁ。ただ、その後の展開も水準以上ではあったものの、何せ前半のじじいリサイクル(だんだん呼び方が雑になってるぞわし!)が面白すぎたのでインパクトに欠ける感はあったりなかったりしたのもまた事実。早い話が、スコルジーは一発屋じゃないかと疑っていたのですよわし。

 などと思いつつ買ってみた続編のこれ『遠すぎた星 老人と宇宙2』ですが...面白いじゃないかスコルジー!前作のじじいリサイクルのような新味のある設定描写、というと、今回はゴースト部隊員の速成教育課程がそれに相当するです。肉体を急速に成人相当まで育てたクローン兵士、という意味では割とよく見る設定ではあるけど、この作品のように、育成過程に説得力ある描写をした作品は意外とあんまりないイメージ。前作の時点でゴースト部隊の異様さ(年齢的な意味で)は既に描写されていたんだけど、今作でちゃんとその点に描写的な裏付けが成されました。ブレインパル万歳!
 ストーリー的にも、ちゃんとディラックの中に潜むブーティンの意識は目覚めるのか、オリジナルのブーティンは何故人類を裏切ったのか、人類はどのように三種族連合の攻撃を凌ぐのか...といった要素や、前作で活躍したジェーン・セーガンが今作でも重要な役回りだったりと、前作読者へのサービスも怠らない(でも前作読んでなくても別に問題なしの)描写で、読み手の興味を惹きつつ、人物描写ありアクションありと実にしっかりしたもの。いや、ミリタリーSFって、酷いものはホントに酷いのよ...。未来でただ戦ってりゃいいんだろ的なのが結構あってですね...ひっくえぐえぐ。でもこれだけしっかり描けてれば全く問題ナッシング。前作は、もしかしたらスコルジー自身も、ストーリー的な観点では、じじいリサイクルのインパクトを持てあまし気味だったのかも知れんのう。わたくしとしては、これでスコルジーは一発屋では無かったと判断いたしますです。そりゃ歴史に残る傑作じゃないけど、昨今、当たり前の娯楽作品を当たり前に供給できる作家ってのはそれだけで貴重なのよ...。

 というわけで、安心して楽しめる作家さんがまた一人。面白いよ!あと、ガメランの名前の中にちゃんとストロスが入っている...やはり君とは仲良くなれそうだッ!ガシイッ(握手の音)!

ジェイムズ・P・ホーガン『黎明の星』

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 木星から分離した小天体「アテナ」とのニアミスのため、大陸の形すら変貌するほどの大災厄に見舞われた地球。土星で独自の文化を築いた地球人の一派・クロニア人に救出されたのも、ごくわずかな人数のみだった。そして数年後、クロニアは災厄後の地球の調査を決定する。かつて地球から脱出し、今はクロニアに協力している地球人、ランデン・キーンもその調査行に同行する。はたして、地球に、原始状態に退行してはいるものの生存者が発見され沸き立つ一行だが、その裏で、かつての有力者だった地球人たちが、往時の権力を取り戻そうと暗躍を開始していた...。

 で、久々のホーガンなんではありますが、

 いくら何でもマンネリ過ぎだろホーガン(笑)!

 かつてホーガン大好き人間...というか、今でも大好きな作品が何個もあるホーガンスキーとしては慚愧に堪えないが、さすがにこれはもう、ホーガンの才能は枯渇してしまったのではと本気で思わざるを得ないレベル。いや、誤解の無いように言っておくと、作品単品のレベルは決して悪くはない。悪くはないんだけど...今までずっとホーガンを追いかけてきた身からすると、今回は、英知と善意のかたまりなクロニア人といい地球人わるい地球人との対比、文化レベルで劣る相手とのファーストコンタクトと相手の尊重か利用かという方向とか、どんなに贔屓目に見ても今までの作品のセルフパロディとしか思えないよ...。いやそのつもりで書いてるなら大したモンだけど。『造物主の掟』と『黎明の星』との違いは、「造物主の方は地球からタイタンに向かったけれど、黎明の方ではタイタンから地球に向かっている」くらいだし。クライマックスまで全く同じネタだし...『造物主の掟』を読んだヒトで、今作のクライマックスを吹き出さずに読めるヒトはいないのではないだろうか。タロイドならともかく、同じ人間でそれはさすがに無理があるよホーガンさん(笑)!ここまでくると、クロニア人哲学も、ガニメアン三部作(『内なる宇宙』はスピンオフと理解されたし)のガニメアンのそれを連想せずにはいられないしなぁ...。うーむむ。

 まあでも、今までホーガン買ってきた人はたぶん買うと思うので特にコメントはしません(笑)。で、この本で初めてホーガンに触れるというヒトは...あー、まあ、楽しめると思いますよ?何故に疑問系。
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 この世には映画や小説で言われているようなオカルトは存在しない。だが、ある種の知られざる数学的定理――NP完全問題をP完全問題に変換して、どんな問題でも多項式時間内に解けるようにしてしまうチューリング定理や、根拠の無い事象にまで確率を設定してしまえるような推論など――は、解くだけで時空に影響を及ぼす。適切な手段と組み合わせれば、時空に大穴を開けて、お隣の宇宙から招かれざる隣人を招いてしまいかねないのだ。ある者は、単なる数学的探究心からたまたま定理にたどり着くことで宇宙的危機を誘発し、またある者は、邪な目的から、あえて禁断の数式に手を染める。だが偶発にせよ故意にせよ、それらの事象は未然に防がれている。なぜならば、政府組織の一部には、それらを秘密裏に処理する部署があるからだ。そのひとつが、英国政府が設立した組織<ランドリー>である…。
 ボブ・ハワードは<ランドリー>の新人エージェント。彼自身、幾何曲線反復法を考え付いて、あやうくバーミンガムを全滅させそうになったところを<ランドリー>にスカウトされた経歴の持ち主だが、そんな彼の現場での初仕事は、アメリカから帰国できなくなっている大学教授モーとの接触。モーもまた、意図せずして危険な確率工学に手を出していたため、アメリカ政府から出国を禁止されていたのだ。どうということはない任務のはずだったが、オカルトを背景にした中東のテロリストグループがモーを拉致したことで事態は一変する。モーの奪還には成功したものの、テログループの背景には、ナチスの魔術研究機関アーネンエルベの関与も推察された。真相究明のため、ボブとモーは、アーネンエルベの遺物が保管されている、アムステルダムの残虐行為記録保管所へと向かうが…。表題作『残虐行為記録保管所』、および、意外なものに潜んでいた恐怖が騒動を引き起こすスラップスティック中編『コンクリート・ジャングル』の二編を収録。

 つうか、チャールズ・ストロスが新作出してるなんてちーとも情報キャッチできてなかったですよワタシは!『シンギュラリティ・スカイ』でワタシの心を鷲掴みにしたストロスの新作なのに、普段チェックがおろそかになりがちなハードカバーであるという点と、今まで邦訳されてきた作品とは毛色が違いすぎる表紙であ、実は一応『アイアン・サンライズ』も読了してます。最初のノヴァ輻射が広がる描写が一番の見所で、物語はというと、主人公たちが結構絶望的な状況に追い込まれて、これどうやって逆転するのかと思ってたら、主人公キレて悪役を突き飛ばす!その先にはたまたま先の尖った何かが!みたいな終わり方をしてかなり吹いた覚えがあります。いや面白かったけど!
 てなわけで、基本チャールズ・ストロスは変なハナシを書かせると真骨頂だと把握しているんですが(笑)、この『残虐行為記録保管所』もなかなかに変なハナシで、ワタシは大変気に入りましたです。「SF+クトゥルー+スパイスリラー」という売り口上は確かにその通りなんですが、ストロスなのでストイックな雰囲気になるはずもなく。SFは確かにその通り。というか、現代に魔法、という作品も数あれど、この作品は描写が馴染みすぎてて逆に新鮮(笑)。つうか、魔法とか異界の解説がただの理系オタクの戯言にしか見えなくてステキです。クトゥルーという点に関しては名義借りの側面が強いですが、実は意外と「見るなよ!絶対に見るなよ!みーたーなー、ぎゃああぁぁぁぁ…」というクトゥルー神話の基本は踏まえていたりするのでOK。禁断の蔵書が満載の書庫とか出てきます。嘘は言ってません。そしてスパイスリラーに至っては…<ランドリー>、諜報機関っつうより、普通に役所だろこれ(笑)。『コンクリート・ジャングル』の黒幕とか酷すぎて涙が出てきます(注:褒めてます)。主人公は一応戦闘訓練とかも受けてるらしいんですが、実際やってることは良識ある理系コンピュータ馬鹿。スバラシイ。
 だのに、『残虐行為記録保管所』のクライマックスの寂寥描写はちょっとぞっとしたりするんだな。黒幕の一ひねり方もちょっと感心してしまったし。

 『シンギュラリティ・スカイ』『アイアン・サンライズ』のエシャトンシリーズとは別に、新たに楽しみになってしまったストロスの新シリーズ。風変わりなホラーが読みたい人も、軽妙なユーモアSFが読みたい人も両方イケるのでオススメです。
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 帝都アルトドルフは今、女ばかりを狙った残忍な連続殺人犯”獣”の話題で持ちきりだった。扇動家エフィモヴィッチが”獣”の正体は貴族だと民衆を煽り立てたため、”獣”を起因とした政情不安は暴動寸前にまで発展せんとしていた。そのような状況下、事態を憂慮したズーデンランド選帝侯ヨハン・フォン・メクレンベルク男爵は、独自に調査を開始した。若く正義感にあふれる警備兵エルセッザー、一匹狼の元警備隊長ハラルド、シグマー教団から派遣されてきた心霊鑑定士ロザンナらを味方に付け、”獣”を追跡し始する。さまざまな人々の思惑が絡み合い、緊張と混迷の色を深めていく状況の中、彼らが見出した真犯人は…。

 というわけで、表紙は他の2冊と同じジュヌヴィエーヴなのに、ジュヌヴィエーヴ系列とは世界観を同じくするだけで特にジュヌヴィエーヴとは関係ない(笑)ジャック・ヨーヴィルことキム・ニューマン謹製のウォーハンマーノベル第3弾。ごめんなさい、読み終えたのはずいぶん前だったんだけど、単純に感想書くのサボってました。ぺこり。だが、さすがにキム・ニューマン作品をこれ以上放置しておくわけにもいかん。キム・ニューマンだからな!『The Man from the Diogenes Club』、誰か邦訳してよ…っていうか梶元靖子超希望。理由は後述。

 で、『ベルベットビースト』ですが…うむ、やはり「ウォーハンマー版ドラキュラ紀元」と言わざるを得ない(笑)。かたや切り裂きジャック、かたや”獣”、貴族階級と下層民の軋轢あるしジョン・ジェイゴ(風のエフィモヴィッチ)いるし、ニューマンお得意の群像劇やら状況描写もあいまって、帝都アルトドルフが何度読んでもロンドンにしか思えません(笑)。とはいえ、ジュヌヴィエーヴの物語とは基本的に独立している分、作品単体を先入観なしに楽しめるし、そうなるとむしろ、いつものキム・ニューマン印の鉄板レベル保証済みの話運びを堪能できるというもの。”獣”の正体も、正体割った後でさらに一ひねり加えるという余裕っぷり。個人的には、今回まとめて出た3冊のウォーハンマーノベルのうちでは、かなりのお気に入りの部類に入るです。だが、今回はニューマンの力量とは全然別の理由で物語を堪能し切ることが難しいのだけれど…理由はこれから。

 で、その理由ですが、噂には聞いていたけど、この巻は特に翻訳が酷い。本当に酷い。今回HJ文庫Gで出た他のウォーハンマーノベルも、他の感想だと翻訳酷い酷いという言及がかなりの確率であるんだけど、ワタシ自身はといえば、確かに引っかかるものはあるにせよ、別に特別あげつらうほどのことでもないよなぁ、てな感じだったのよ(同一作品中における固有名詞の統一、みたいな基本中の基本は別にして。できてなかったよね、『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』では)。でも今回はアカン。遂に「何度読んでも何が言いたいのかさっぱり分からない」というレベルのパートが出現するようになってしまった(笑)。誰か、第四部冒頭の数ページをどう解釈していいのか分かりやすく解説してくださいよひっくえぐえぐ。前後の文脈から、暴動の原因となった事象について言及しているのだろう、というところまでは想像付くんだけど、具体的な文章レベルまで降りると、読めば読むほど混乱してくるというECMジャミングな翻訳文。訳が難しいというのは容易に想像がつくけれど、せめて小説文として意味が通る程度までには頑張ってください…(涙)。
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 『ドラッケンフェルズ』の冒険を乗り越えたジュヌヴィエーヴと劇作家のデドレフ・ジールックは、今はデドレフの劇場のあるアルトドルフで共に暮らしている。デドレフは、ドラッケンフェルズ事件の顛末を演劇化した作品を皮切りに、いまや天才劇作家の名を欲しいままにしていたが、ジュヌヴィエーヴは、彼の作品の傾向が次第に陰惨な傾向を帯びていくことに不安を覚えていた。一方、かつてドラッケンフェルズ城が存在した場所で、ある存在が目覚め、デドレフとジュヌヴィエーヴを狙って動き始めた…。『ドラッケンフェルズ』のその後のデドレフとジュヌヴィエーヴを描く『流血劇』、人里離れた館での怪異『永遠の闇の家』、刺客に仕立てられたジュヌヴィエーヴが、暗殺対象の粗暴な伯爵の元で体験する人間模様『ユニコーンの角』の、ジュヌヴィエーヴに関係する中篇3編を収録。

 この期に及んでまさか出るとは思ってなかった、ジャック・ヨーヴィルことキム・ニューマンの新作。しかも、以前刊行された『ドラッケンフェルズ』の新訳と併せて一気に計3冊同時刊行。『ドラキュラ崩御』からこっち、もう二度とニューマンの作品は拝めないかと思ってたですよ…うううう…よかった…。つうかホント、何で今更(笑)。英語版Wikipediaのニューマンの項を見る限り、2000年代に入ってからは寡作っぽいからなぁ。でも短編集『The Man from the Diogenes Club』とか超読みてェ!ディオゲネス・クラブからの男とか、みんなチャールズ・ボウルガードみたいな素敵ジェントルメンなんだぜきっと!きゃー!きゃー!
 …で、『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』ですが、テイスト的には『ドラッケンフェルズ』のスピンオフっぽい感じ。スピンオフという意味では、もう1冊の『ベルベットビースト』の方がより適当なんですが、この『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』に収録されている作品も、『ドラッケンフェルズ』さえ押さえておけば、それぞれ単品でそれなりに楽しめるし。人気だなぁジュヌヴィエーヴ。されど『流血劇』のラストでえーっとなったヒトは、『永遠の闇の家』の冒頭でもっとえーっとなるでしょう(笑)。ワタシも最初に『永遠の闇の家』を読み始めた時には訳が分かりませんでした。でも最後まで読むと、オチはそれでいいのかと思いつつ(笑)今ではウォーハンマー風不条理サイコホラーとして結構お気に入り。でもやっぱり全体としては『ドラッケンフェルズ』外伝だよなぁ。でもやっぱりニューマンは手堅くて面白いんだよなぁ…。
 何はともあれ、ニューマン好きもそうでないヒトも、興味があるなら是非とも押さえておくべき一品。『ドラッケンフェルズ』読了が前提ですが(笑)。

 ところで、固有名詞の表記が途中で断りもなしに変化するとかマジ勘弁してください。スケドーニが途中から何気なくシェドーニに表記が変わってて、気づくまで鬼のように混乱したでございますですよ。校正はしっかりと!
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 前に出た『ラヴクラフト全集7』でてっきり打ち止めだと思っていた、創元のラヴクラフト全集ですが、なんと別巻とか言って新刊がリリースされていたのであった。とは言っても、今回はラヴクラフト本人の作品ではなく、ラヴクラフトが添削した他作家の作品をまとめて収録するという形。なるほど、だから別巻なのね。とはいえ、ラヴクラフトの鬼添削っぷりはつとに有名なので、実質ラヴクラフト本人の新作と考えても良かろうて。
 ……とは言うものの、ゼリア・ビショップとか、アドルフォ・デ・カストロとかの定番作家の定番作品も入ったりはします。『イグの呪い』や『電気処刑器』なんて読むの何度目だわし(笑)。でもでも、恥ずかしながら、特に『電気処刑器』にラヴクラフトの添削が入っていたとは知らなんだ…。他にも、青心社のクトゥルーシリーズを読みつけてるようなヒトなら、覚えのある作品が他にもちらほら。とはいえ、ラヴクラフト添削シリーズという括りで分類された短編集、というのもまとめ方として面白いのでそれはそれでよし(笑)。

 収録作品を個別に見てみると、C・M・エディ・ジュニアとかいうあんまり聞かない名前の人の作品が4作品も収録。4作品のうち、『灰』と『幽霊を喰らうもの』は割と凡庸な気がするけど、シリアルキラーを題材とした作品をラヴクラフト的に書いたらこうなる、という見本のような『最愛の死者』は、コズミックホラー関係ないけど、全収録作品の中でもトップレベルの出来。オチが投げっぱなしジャーマンの『見えず、聞こえず、語れずとも』も、『闇をさまようもの』の陳述調テイスト作品としては悪くない。アドルフォ・デ・カストロ『最後の検査』は…基本プロットが『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』なんですが…。何か関係あるんだろか…。

アルフレッド・ベスター『ゴーレム100

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 22世紀、ニューヨークの成れの果ての巨大都市、富裕層が贅を尽くす一方、都市下層で溢れかえる貧困層では殺人や強盗が常態化している都市ガフで、突如理解不能の超現実的な連続殺人事件が発生した。蟲が生きたままの人間を喰らい、巨大な化け物が現れ、死体が冒涜的に弄ばれる。有能な警察隊長インドゥニですら困惑するような状況だ。一方、都市の上層では、香水製造会社CCC社が、秘蔵っ子の天才科学者ブレイズ・シマの謎の遁走に悩まされていた。そしてシマの精神分析のために呼ばれた最高の精神工学者グレッチェン・ナン。彼ら3人は、やがてそれぞれの成り行きから、連続殺人事件の元凶である存在を追求することになる。鍵は富裕層の有閑蜜蜂レディたちの集会。彼女らが戯れに行った悪魔召還の儀式で、悪魔とは別の何かが生まれ出でたのだ!3人は現実世界から精神世界へと追跡の手を広げ、遂にその存在――「ゴーレム100」と接触する...。

今更ベスターの新作が出るとはつゆとも思ってなかったわたくしですが、出るもんですよベスターの新作。しかもハードカバー(まぁ国書刊行会だからな!)だからどうしようかと思ってたんだけど、ぱらぱらめくってみたら、なんか妙な活力に溢れまくってる文章だったので即購入。いやはや。
 とりあえず冒頭から、相変わらずのヘンな語感と訳者泣かせな台詞回しのベスター節が健在で嬉しい限り。しかも前半はミステリ仕立て...と言えないこともない展開で、実は『虎よ!虎よ!』よりも『分解された男』の超能力捜査ストーリーが好きだったわたくしにはまさにご褒美です。でも今回、他にも増して色々下品だ(笑)。いや褒めてるんだけど。なんか全編に渡って、人間の三大欲求にドライブされた原始的な活力が話の源になってるような感じですね。自分でも何が言いたいのかさっぱりですが、とにかくそんな感じなのです。しかも途中でいきなり絵本になったりしてベスター心底やりたい放題(笑)。最初、いきなり何が起こったのかと思ったぞ。そして、終盤まで何とかゴーレム100を追跡し阻止する話になってたのに、最後の最後で明後日の方向にステップアップして飛んでいってしまう物語。しかも戻ってこないし(笑)。一番不思議なのは、こんだけやりたい放題なのにも関わらず、ちゃんと面白いことだったりする(笑)。これ、ベスター以外だったら、絶対に面白くもなんともない単なる訳分からん物語で終わってたんじゃないかと思うわたくし。ベスターはすごいな...。

 癖はあるけど、たまにはこういうのもいいかもしれないと思ったり思わなかったり。最近毒にも薬にもならないような作品多いし、時々はこういうアクの強めな作品を読むのもオツかもだ。こんなんばっかでも困るけど(笑)。
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 人間の意識を小さなメモリー・スタックに蓄えることが可能となり、意識の伝送や肉体の変更が可能となった27世紀。元エンヴォイ・コーズであり、地球で 特赦を得たタケシ・コヴァッチは、今はサンクション第4惑星で、政府雇いの傭兵部隊・カレラ機甲部隊の一員として、反政府のケンプ軍といつ果てるともない 戦いの最中にあった。だがそこで出会ったシュナイダーという男から得た思わぬ話。戦いの前線真っ只中のダンダレク海岸、そこに隠されたハイパーキャスト・ ゲートを抜けて出られるサンクション星系の深宇宙に、古代火星人の残した恒星間宇宙船があるというのだ。人類をはるかに凌駕するテクノロジーを秘めた火星 人の遺産を押さえることができれば、莫大な利益を得ることができる。儲け話に乗ったコヴァッチは、収容所に囚われていた考古学者を救い出し、火星人の利権 の独占を狙う企業の重役と手を組むと、訳ありのスタックから選抜したチームを組み、ダンダレク海岸へと向かうが...。

 というわけで、前作 『オルタード・カーボン』以来、待ちに待ってたリチャード・モーガンの新作。つうか正直出るとは思ってなかった(笑)。だって海外系って、鳴り物入りで出 てきてもあっという間にフェードアウトしてしまうのが常だからなぁ。『スカル・セッション 殺戮の脳』、皆が忘れてしまってもボクは忘れてないよダニエル・ヘクト!『Babel Effect』出せよどこか(涙)!プレストン&チャイルドはヘクトよかマシだけど、皆は知らんがワタシは大好きペンターガスト捜査官も『殺人者の陳列 棚』以来全く音沙汰なし。泣くぞ!そんなこんなに比べれば、リチャード・モーガンの刊行ペースは矢継ぎ早と申しても良いでしょう。......海外作品の読みすぎ で何かの感覚が凄くずれてきてないかわし。

 で、肝心の作品内容はといえば...。前作『オルタード・カーボン』は、SFテイストで彩った ハードボイルドストーリーが最大の魅力でしたが、今回の『ブロークン・エンジェル』は逆に、ハードボイルドテイストで彩ったSFでございますですね。一見 単に逆になっただけのように見えますが、リチャード・モーガンがSF書きとしてはもしかして凡庸なんじゃ、という疑念を呈した瞬間、これは非常に重要な問 題になったりする(笑)。ぶっちゃけ、今回の作品の面白さは、ハードボイルド方面にどれだけ価値を見出せるかにかかってマス。前作は本筋がハードボイルド 系だったので、SF部分は(良くも悪くも)彩りで済んだけど、今回はSFのほうが本筋だからなぁ。言いたくないけど、このハードボイルド文法がなかったら この作品、ハヤカワ文庫SFあたりで粗製乱造される並作品とそう変わらないよね...きゅう。まあ中盤の展開が半分くらい、放射能汚染された海岸で考古学者が ハイパーキャスト・ゲートを開けるのをひたすら待ちながら「今朝は歯ぐきから血が出ちゃったよー、明日は吐血するかもなHAHAHAHA!」とか言いつつ (言ってない)グダグダ放射能で弱っていくというどんより展開でカッフン、という事情もありますが(笑)。いやはや。

 とはいえ、標準以上には面白いし、タケシ・コヴァッチはいいキャラなので次回に期待したいわたくしなのでした。いやそれ、今回は駄目だったって言ってるのと同義なんじゃ...(笑)。