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凍月
 
グレッグ・ベア
『凍月』
小野田和子 訳
ハヤカワ文庫SF1242
ISBN4-15-011242-8
560円

グレッグ・ベア
の作品

『ブラッド・ミュージック』
『天界の殺戮』
『女王天使』
『火星転移』
『凍月』
『斜線都市』


『凍月』

 …薄い(笑)。いや、手にとってはじめの正直な感想。「ホログラム街の女」に引き続き、なんだか最近ハヤカワは随分とシェイプアップにいそしんでいる模様。読みやすいボリュームという点ではいいこっちゃ。うむ。
 22世紀、月コロニー。「嵐の大洋」地下に設けられた天然の洞窟を利用した科学施設「氷穴」では、サンドヴァル結束集団(BM)の元で、絶対零度を達成するための実験が続けられていた。そのとき、サンドヴァルBMである主人公の姉が、「氷穴」の余剰冷却能力を当て込んで、410人もの冷凍保存された人間の頭部をもちこんできた!その「頭」に蓄えられた記憶を再生できれば、月史上最大の歴史的偉業になるというのだ。はたして、410個の頭は「氷穴」へと持ち込まれるが、その頭を巡って騒動が…。
 死をモチーフにした作品というと、真っ先にロバート・J・ソウヤーの「ターミナル・エクスペリメント」が思い浮かぶわたくしですが、似てるなぁ。ストーリーの展開の仕方が。そのココロはと言うと、中盤は最初のツカミのネタとはあんまり関係ない話が展開し、しかしながらそれも面白いという(笑)。
 なにせ、最初に裏表紙のあらすじを見たときに「おお、この『氷穴』と410個の頭が思いもよらない論理的結合を果たし、実験施設で大異変に至る緊迫したサイエンスが展開されるのだな」と得意の(笑)早合点をしてしまい、ワクワクしながら本を開いたが、よくよく考えてみたら、ベアがそんなホーガンばりの展開になるはずもなかったのだった。というわけで、中盤は、その410個の頭の中身を巡って権謀術数とびかう、といった話です。されど、けっこう楽しく読ませるんだ、これが。それに、ラストではついに「氷穴」と410個の頭が結び付き、美しくも少しぞっとするようなイメージが展開。なかなか。
 コンパクトにまとまった佳作です。「女王天使」「火星転移」の世界に連なる作品ですが、読みやすいので、この作品でこのシリーズの世界に触れてみるのも悪くないかも…だ?

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