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サターン・デッドヒート
 
グラント・キャリン
『サターン・デッドヒート』
小隅黎・高林慧子 訳
ハヤカワ文庫SF770
ISBN4-15-010770-X
520円

グラント・キャリン
の作品

『サターン・デッドヒート』
『サターン・デッドヒート2』


『サターン・デッドヒート』

 古本屋にて、続編の「サターン・デッドヒート2」と一緒に購入。現在では入手は難しいかもしれないけど、前に名古屋駅地下の書店で並んでいたのを見たこともあるので、根気よく探せば見つかるかも。
 などといきなり購入時の心構えから入ったのは、僕がこの作品を深く深く、ン年に1度のクリティカルヒット級に気に入ってしまったからです。いいぞ、これは。

 スペースコロニーと地球が経済的な原因などで反目しつつある中、土星の衛星イアペトゥスで、異星人の遺物とおぼしき謎の六角形体が発見された。分析と解読の結果、その遺物を残した異星人は、さらに同じような物体を土星近傍に残しており、その内容が、異星人が土星に残した「贈り物」の在処を指し示していることがわかった!それを手に入れれば、経済的に相手の遙か先まで進めるかもしれない。スペースコロニー側は、遺物の解読に携わった考古学者クリアスを土星に派遣。一方、地球側も負けじと宇宙船を繰り出した…。

 実は裏表紙のあらすじほど派手な話ではないので、その類のアクション風作品を期待していたりすると見事にスカるだろうが、少しでもハードSF系の作品を読みつけているのなら、最初の数ページ読めばそこらへんはすぐにわかるはず。しかし、ウィットの効いた語り口が、ともすればうざったくなるほど堅くなりがちなハードSF的展開を楽しく読ませてくれる。まずこれがいいんだ、この本は。最近読んだ本はこういう語り口の作品が少なかったからなあ。わたし、個人的には、この時点で既に合格点出してます(笑)。
 で、内容はといえば、これが良くできた土星漫遊記。細かい点にまで気を配った描写が、物語に深みを与えるのに一役買っている。僕は、主人公が初めて土星を近距離から眺めたときのやりとりが好き。それから、意外なことに、この本は主人公クリアス・ホワイトディンプルの成長記としても読めるのだ。象牙の塔で暮らしてきた学者先生がインディ・ジョーンズ(笑)に変わっていく過程。ちょっとできすぎかな、とも思えるが、十分けれん味として許容できる範囲内。うん。それよりなにより、この本のラストのエピソードは、SF史上屈指の名エピソードである。「ちっぽけなブリキ缶」に何ができるか見るがいい!この部分、わたしゃもう何度読んだかわからないくらい読んだが、いまだに手に汗握らされる。最高である。なんでこんなスゲェ作品が今じゃ手に入らないんだよぅ。うううー。
 それから、早老の天才児、ジュニア・バディルを忘れちゃならん。これがまたいい味だしてるんだ。

 本当に久しぶりに、のめり込んで、笑って、手に汗握って、おまけにちょっとホロリとさせてくれるいい本を読みました。このジャンルは人を選ぶというのは重々承知だけど、もしこの類の作品に抵抗がなくて、手に入れる機会があったなら、私の最大級の讃辞とともにおすすめします。「買え!」

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