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吉備真備陰陽変
 
片桐樹童
『吉備真備陰陽変』
学研M文庫 M-か-11-1
ISBN4-05-900121-X
760円

片桐樹童
の作品

『吉備真備陰陽変』


『吉備真備陰陽変』

 奈良時代中期、天皇に対する呪殺・謀反の咎で、長屋王は家族もろとも自死に追い込まれた。後に言うところの「長屋王の変」である。それから8年後、平城京には、最大の政敵である長屋王を駆逐した藤原4兄弟が、為政者として権力の座に君臨している。だが長屋王の変の顛末に疑問を抱き続けていた元正上皇は、唐で最先端の学問・技術を学び帰国した吉備真備に、事件の真相解明を依頼する。真備は上皇の側仕えの少女・阿礼女(あれめ)と共に捜査を開始するが、謎は深まり、さらには変の真実を葬ろうとする勢力の手先が真備たちに襲いかかる!唐仕込みの陰陽技術で敵を退けながら真相を探る真備は、はたして長屋王の変の真実を掴むことができるのか…。

 本屋の店先で、なぜか唐突に、猛烈に、陰陽系の何かが読みたくなったので、何も考えずに目の前にあった本を買いました。ワタシにしてはかなり珍しいチョイスな(笑)。
 ところがどっこい、これが何ともおいしいアタリ本。陰陽で妖術がヒャラーッとしてるアンナチュラルな話を予想していたので、買ったあとで「古代ミステリ超大作!」とか書いてあるのを見たときにはこりゃやっちまったかと思ったさ。確かに看板に偽りはないけれど、でもワタシにはそれ以上だったよ!

 だいたい学研M文庫なのに、思わず巻頭のカラーページと登場人物のイラストを探してしまいたくなるようなこのキャラの立ちっぷりは何(笑)!? この作者さん、人物の書きかた上手いぞ。この話のホームズ役たる吉備真備なんか、すげー二枚目な上に、お前一体唐で何を勉強してきたんだと言いたくなるほど文武に秀でまくっているという完璧超人なのに、どこか飄々としてて嫌味がないんだよなぁ。上皇と真備の間の連絡役として真備と行動を共にする阿礼女も、実は高貴な血筋であることを匂わせながらも、本人は恋に恋する快活な乙女…って俺のツボ突きすぎじゃーッ(笑)!真備のライバルたる生臭坊主の玄ムも、いかにもトリックスターらしい掴み所ない不審っぷりで脇を固め、その他脇役もちゃんと動いていてとっても良。歴史関係というので無味乾燥な登場人物を予想していたワタシには、予想を良い意味で完全に裏切るキャラたちなのであった。
 でもキャラ立ちだけではただの色物(笑)。その点この作品は、ちゃんとお話も良くできてます。タイトルにこそ陰陽と入ってはいるものの、軽々しく超自然現象に頼ってないのもかえってポイント高し。ただ、ミステリというよりは、エンタテイメント色の方が強い気がしますですね。真備は長屋王の変の真相を探る傍ら、襲い掛かってくる敵と丁々発止とやり合い、阿礼女は可愛らしく右往左往(笑)。最後は奈良時代なのにあっちこっちでぼかんぼかんと爆発するわバトルはあるわで最高です。無論ワタシは大歓迎。雅な奈良時代の空気と過剰なキャラ立ちとテンポのいい展開の絶妙なアンバランス感がたまらんわい。

 日本の、しかも古代が舞台なのに、現代ものと楽勝でタメが張れるくらいの痛快エンタテイメントミステリ(どんなんや)。最近すかっと楽しめるエンタテイメントがないなぁ、でも話が頭空っぽすぎなのもやだなぁ、という贅沢なあなたも大満足(たぶん)。読んどけ!

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