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キング・ラット
 
チャイナ・ミーヴィル
『キング・ラット』
村井智之 訳
アーティストハウス
ISDN4-04-897310-X


チャイナ・ミーヴィル
の作品

『キング・ラット』


『キング・ラット』

 青年サウルに突然不幸が降りかかった。父親が殺され、警察にその容疑者として逮捕されてしまったのだ。独房で呆然とするサウル。しかし、そんな彼の前にある男が現れた。悪臭漂う薄汚れた服を着て、警官たちの目をかいくぐり、鉄格子の間を何もないかのようにすり抜けてしまうこの男は何者なのだ?やがて明らかになる男の正体。男はロンドン地下世界のネズミを統べる者、人間の姿にネズミの能力を持つ者、キング・ラットだというのだ!さらにサウルには、彼と同様ネズミの血が流れているという。キング・ラットに導かれ、人の世界に背を向け、ロンドン地下世界に生きることになるサウル。やがてサウルは、彼らを脅かす仇敵と戦うことに…。

 この話を一言で要約すると、「小汚いアメコミ」(笑)。とりあえず、登場人物がヘン。キング・ラットは言うに及ばず、仇敵にやられて精神に変調をきたしてしまった鳥の王ロプロップ(当然空を飛ぶ)や、ロープでするすると天井からぶら下がったりするクモ男のアナンシとか、全身タイツを着ていないのが不思議な方々ばかりが登場しますです。かたや彼ら共通の敵は、笛の音で動物を自在に操る能力を持った謎の男…ハーメルンの笛吹き男。キング・ラットや鳥の王やクモの王は、それぞれネズミ、鳥、クモを使役して笛吹き男に立ち向かうし、笛吹き男は笛吹き男で、それらの鳥獣を笛で操り返したりしてさあたいへん。
 と、ここまでだと本当にアメコミ風なんだけど、実際に読んでみると全然ヒーローじゃないですこのヒトタチ。だいたいキング・ラットもサウルも体にネズミの血が流れているので、食事は人間の残飯(爆)。どこの世界に人間の残り物を漁って命を食いつなぐヒーローがいるっちゅうねん。しかもネズミなので、下水道とかゴミで薄汚れた裏路地とか、そんなところしか移動しません。そりゃ悪臭ぷんぷんで汚れるっちゅうねん。笛吹き男の方はといえば、イメージするような優男風なところは微塵もなく、ばきばき人は殺すし(フルートで撲殺&刺殺)、キング・ラットたちを圧倒的な力で追いつめていく。こわいよう。っていうかバス操車場でサウルを追いかけてるときの笛吹き男…アンタはターミネーターか(笑)!

 そんなこんなで、どことなく一筋縄ではいかない味わいの作品。書き終わった後で、上の紹介だとなんだかやたら派手な作品に見えてしまうことに気がつきましたが(笑)、実際はそれほど能天気なノリの作品でもありませぬ。ちょっと変わった話が読んでみたい人なら。
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