暴走野郎うちの本棚いらっしゃい作品名別メニュー | 作家名別メニューキム・ニューマン > 『ドラキュラ崩御』

ドラキュラ崩御
 
キム・ニューマン
『ドラキュラ崩御』
梶元靖子 訳
創元推理文庫576-03
ISBN4-488-57603-6
1100円

キム・ニューマン
の作品

『ドラキュラ紀元』
『ドラキュラ戦記』
『ドラキュラ崩御』
『ドラッケンフェルズ』

キム・ニューマン
の短編を収録した作品

『999 〜妖女たち〜』
(『モスクワのモルグにおける死せるアメリクァ人』収録)


『ドラキュラ崩御』

 1959年、歴史と映画の都、ローマ。今ローマは、かのドラキュラ公の成婚に沸きかえっている。そんなローマで、吸血鬼への転化を拒みつづけたチャールズ・ボウルガードは、温血者として人生の最期を迎えようとしていた。残された時を共に過ごそうと彼に寄り添うジュヌヴィエーヴ。そんな彼らのもとを訪れるのは、彼らに招かれたケイト・リード、そして、密命を帯びた英国諜報部のボンド中佐!一方、ローマでは、吸血鬼、それも長命者ばかりを狙う謎の殺人者<深紅の処刑人>が暗躍していた。<深紅の処刑人>、そしてその背後に見え隠れする<涙の母>とは誰か、いや何か?ドラキュラの婚姻の儀が刻々と迫る中、全員が運命の渦中へと巻き込まれていく…!

 …最高。

 えー、現在ワタシはこの『ドラキュラ崩御』を読み終えたばっかりですが、今回の話、掛け値なしに面白いわ。なんか毎回おんなじこと言ってるような気もしますが、頼む、今回は信じろ(笑)。マジ面白かったッスよ!

 もちろんシリーズ3作目ということもあって、今までキム・ニューマンの紡ぎ出す物語を楽しんできた人たちには、『紀元』や『戦記』に出てきたキャラクターたちのその後が気になるところ。ワタシ的には、ケイトやジュヌヴィエーヴと並んで、今回の話の主役の一人になるあの人の再登場が一番びっくりしたッス。『紀元』では結果的にボウルガードとジュヌヴィエーヴの引き立て役になってフェードアウトしてしまったあのヒトが…。久々登場のジュヌヴィエーヴや前作より続投のケイトもちゃんとイメージ崩れてないし、何より、ボウルガード!あんた死にかけなのにカッコいいよ!っていうか死にかけなのにボンド中佐より強いってどういうことよ(笑)!
 意外な末路、という点では、『戦記』の主人公のひとりだった、エドウィン・ウィンスロップが一番意外だったかも。ちょっと登場するだけだけど…あのウィンスロップがねぇ…。

 しかし今回は何と言っても話がいい。ドラキュラ成婚に沸き返るローマを舞台に、様々な勢力が暗躍する。『戦記』の時みたいに派手な戦争もいいけれど、やっぱりキム・ニューマンの物語は、さながら吸血鬼のごとく、闇から闇へと展開していく話が一番映えますですね。深紅の処刑人と涙の母はばきばきエルダー殺してくし、ボンド中佐はソ連の諜報機関とやりあってるし。多数の登場人物を出しながら、そのそれぞれに個性を持たせるニューマンの手腕も相変わらず。
 だが、今回それよりも際立つのは、話の絶妙な盛り上げっぷり。あらすじを見るだけでも、いくつか話の山場になりそうな要素は読み取れるけど、今回はその山場の配置が絶妙。ニューマンはハッタリを効かせて話を盛り上げるタイプじゃないと思っていたけれど、今回は2度3度とぶちかましてくれましたよ、いやホント。前半の山場で、盛り上がり的にはもう終わっちゃうんじゃないかってくらいの山場が一つ来るし、中盤の山場は、前2作を追いかけてきた者にとっては衝撃極まりない展開。そこから話は趣を異にし、正統派ホラーっぽい雰囲気まで入ってきた挙句、終盤ではこれまた衝撃の告白が。シリーズを追いかけてきた人をいい意味で裏切る意表をつく展開。盛り上がり方という点では前2作以上かもだ。うーん、さすがニューマン。

 長く、本当に長く待たされたけれど、それだけの価値は絶対にあったな。長く待たされると期待ばかりが膨らみすぎて、いざ読んでみるとガッカリ、ということはよくあるけれど、この作品はちゃんと期待に応えてくれたぞ!はたしてドラキュラは崩御するのか否か!? <涙の母>とは!? 転化を拒むボウルガードの行く末は!? さあ買え。さあ読め。シリーズ未読なら、ケチくさいこと言わずにシリーズ3作全部買え!それだけの価値はあるぞ!


 それにしても、今回の話のウリの一つは、間違いなくあのボンド中佐の登場だと思うが、このお話の中のボンド中佐は実際には…訊くな!訊かないで!あれはボクのボンド中佐じゃないよ!ニセボンドだよ!ヘイミッシュ・ボンドだし。よ、弱えー。限りなく、弱えー。たぶん師匠のドレイヴォッドとやりあったら一瞬で負ける。ボウルガード本人とやりあったら、まず勝負するところまでも行かなさそう。アストンマーチンが泣いてるぞ!っていうか、この世界にはボウルガード以外にいい男はおらんのか(笑)!

上で紹介されている本をbk1の買い物カゴに入れます

うちの本棚いらっしゃいばな〜あいこん
"Welcome to My Bookshelf"
Presented by KOJIMA Shuichi