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ドラキュラ戦記
 
キム・ニューマン
『ドラキュラ戦記』
梶元靖子 訳
創元推理文庫576-02
ISBN4-488-57602-8
960円

キム・ニューマン
の作品

『ドラキュラ紀元』
『ドラキュラ戦記』
『ドラキュラ崩御』
『ドラッケンフェルズ』

キム・ニューマン
の短編を収録した作品

『999 〜妖女たち〜』
(『モスクワのモルグにおける死せるアメリクァ人』収録)


『ドラキュラ戦記』

 前作においてイギリスを追放されたドラキュラは、しかし野望を捨てたわけではなかった。闇の父としての血縁関係を利用して、ヨーロッパの宮廷から宮廷へと流浪した挙げ句、ドイツ皇帝に取り入り、ドイツの軍最高司令官となり、自分を裏切った世界に対して猛然と報復を開始したのだ。そのような状況下、ディオゲネス・クラブは、ドイツ軍の駐屯地、マランボワ城で、なにか複雑な陰謀が進行中なのを察知する。いまやマイクロフトらと共に闇内閣に席を占めるようになったボウルガードの指令の元、諜報員ウィンスロップがマランボワ城の調査に乗り出す。ドイツではエドガー・ポオが密命を受けマランボワへと向かう。そして新生者の域を脱しつつあるケイト・リードもまた…。

 思えば、「ドラキュラ紀元」の巻末の訳者あとがきで、既にニューマンが続編に取り掛かっているということを知ったときから、わたしゃ今日という日をどんなに待ったことか…。「(おそるおそる)みなさん、読んでみたいですか?」って、ワタシの返事に否やがあると思うか梶元靖子ォ(敬称略)!既に「ドラキュラ紀元」だけで数年に一度あるかないかの大満足状態に陥っているというのに、続編まであると知らされた日にゃアンタ…。
 それ以来、一日千秋の思いで待ち続けて3年半、現在ワタシの手元には「ドラキュラ戦記」がある。
 読む。それきり止まらなくなる。
 ……。
 最高っす、最高っすよキム・ニューマン!
 かつて「紀元」でワタシを虜にした呼吸が、続編でもきちんとそのまま息づいてるよ!ああ、ごろごろごろ…。
 というわけで、現在のわたくしは、あばたもエクボなパーペキ冷静さ欠如状態に陥っているので、もし、影響されて買っちゃったけど、読んだらどうということはなかった、なんてことになっても、ワタシを恨まないでください。このシリーズに関しては、わたしゃ自分さえよければ後はもうどうでもいいんです(笑)。オイオイ。
 でも、続編出た嬉しさのあまり舞い上がっていても、作品のおもろいつまらんくらいは見分けがつくぞ。それでも断言しよう、この作品は面白いッ!……うーん、やっぱ舞い上がってるのかなぁわし…(笑)。ニューマンの作品は分厚いけど、章立てが細かくて、連作短編のようにそれぞれで小さく起承転結してるから、ついつい引き込まれちゃうんだよねぇ。それに、文体こそ三人称だけど、視点自体は特定の登場人物にしっかりと据えられてるから、感情移入がしやすいったらもう。
 それに、主役級はもちろん、チョイ役に至るまで、それぞれが確かな存在感を持っているのも相変わらずで嬉しい限り。キム・ニューマンは、ここらへんの生活臭の出しかたがすごくうまいと思うぞ。老いてなお一層カッコよくなってしまった(笑)ボウルガード、その元で働くちょっとやんちゃな感じの諜報員ウィンスロップ、前作よりもたくましくなって、前作のジュヌヴィエーヴを髣髴とさせるケイト・リード、戦いに自分の存在意義を見いだしている、ストイックな蝙蝠の翼リヒトホーフェン…などと、キャラの印象をいちいち書き出していったら、巻末の登場人物辞典になってしまう。本当に生き生きしてるよなぁ、登場人物。
 また、ヴァンパイアものらしく、血の妖しさも倍増。一層美しくグロテスクになりました。イゾルドのバレエのくだりなんぞ、「死霊たちの宴」のレイモン「森のレストラン」以来、久々に文字で気分が悪くなったし(笑)。新生者(ニューボーン)と長生者(エルダー)、お互いの血を飲みあってヴァンパイアになる儀式・転化、血統によって発揮される能力…。それら全てが、当たり前のようにさりげなく描写される世界…。ああ、いいわぁ。それにもちろん、ドイツの吸血鬼戦闘航空団のリヒトホーフェンたちにも…おっとと。
 もはやくどくど申し述べる必要もないと思うけど、もちろん話の展開の面白さも太鼓判。マランボワ城にドイツ軍の精鋭戦闘機乗りが集結した意味とは?ドラキュラの指揮下のドイツ軍はいかなる動きを見せるのか?単品でも十分イケるけど、未読ならば、できれば「ドラキュラ紀元」から読んでほしいと思うわたくし。ボウルガードら前作の登場人物のかつての姿や、ドラキュラ支配下のイギリスの描写を知っておくと、今回の話にも何倍も深みが出るし…。あと、この時代を舞台にした、古今東西の作品を知ってたりすると、より一層楽しさ倍増。このシリーズの常として、登場人物のかなりが、いろんな作品の主人公や登場人物だったりするので、知っていればいるだけニヤニヤできること請け合い。わたしゃ、イギリス軍の塹壕で、モロー博士と一緒に、ハーバート・ウェスト(ラヴクラフト作品の、彼だ!)が生体実験をやってるのを読んで、思わず悶絶しちゃいましたよ(笑)。はまりすぎ。

 さぁ、これで君も読みたくなったね。ワタシみたいに既知外のように転げ回ってるのは稀だと思う(笑)けど、このシリーズの面白さを知らないのは、絶対に損だ!海の向こうでは、既に次回作「JUDGMENT OF TEARS」も出版されてるらしいし、ワタシと一緒に、3作目の日本到来を牙を長くして待とうぢゃないか!

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