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パヴァーヌ
 
キース・ロバーツ
『パヴァーヌ』
越智道雄 訳
扶桑社
ISBN4-594-02943-4
1429円

キース・ロバーツ
の作品

『パヴァーヌ』


『パヴァーヌ』

 1588年、エリザベスI世が暗殺され、イギリスはローマカトリック教会の支配下に入った。そして1970年代の今もその支配は続いている。カトリック教会の元、テクノロジーの発達は阻害され、異端審問が行われ、いまだイギリスは古い封建社会のままであった。いまだ蒸気機関車が幅を利かせ、腕木式の信号塔による通信が行われているイギリス。そのような中、さまざまな人たちが、さまざまな人間模様を見せる…。

 一部の人たちの間では俄然評価が高く、手に入んないヒトにとってはほとんど幻の稀覯本扱いだったこの作品。最近めでたくも復刊され、本屋でたまたま見かけたわたしゃ一も二もなく購入したのだけれど…。
 そこまで言うほどのものか、コレ(笑)。
 いや悪い本じゃないですよ、いやホント。テクノロジーが阻害されたイギリスの情景描写や登場人物の生涯はいきいきしてるし、こういう、その時代に生きてる人たちの息づかいまでが感じられそうな話はわたしゃ好きだし。問題は…まぁ個人的なもんスけど…その辺りの描写が上手すぎて、時々自分に「これは20世紀のおはなしなんだ」と言い聞かせてないと、ただのちょっと変わったイギリス昔話にしか思えなくなってしまうところ(笑)。ある意味淡々としすぎてて、改変世界ならではのダイナミックな歴史のうねりみたいなのはそれほど感じなかったからなぁ。
 でもそれならそれ、中身を素直に楽しめばいいわけで。個人的に好きなのは第二旋律「信号手」。っていうかコレだけでいいよわし(笑)。イギリス中に張り巡らされた、腕木式の信号塔ネットワーク。手動で腕木を動かして信号を送る信号手は、それだけで皆から敬われ、そして同時に責任も計り知れない職業だ。「信号手」は、そんな信号手にあこがれた少年レイフの生涯の物語。信号塔っちゅうガジェット自体が、いかにもこんな世界ならではのもので、信号手ギルドでのレイフの生活はそれだけで他の話と比べて(わし的に)倍くらい生き生きしてる。余談だけど、あとがきによると、この信号塔っていう制度、18世紀に一時期本当に実在したらしいですね。ほぉ。

 派手さはないけれど、落ち着いた雰囲気の上品な小説。そういうのが好きな人なら。
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