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フレームシフト
 
ロバート・J・ソウヤー
『フレームシフト』
内田昌之 訳
ハヤカワ文庫SF1304
ISBN4-15-011304
880円

ロバート・J・ソウヤー
の作品

『ターミナル・エクスペリメント』
『さよならダイノサウルス』
『スタープレックス』
『フレームシフト』
『ゴールデン・フリース』
『フラッシュフォワード』


『フレームシフト』

 ヒトゲノム・センターに勤務する気鋭の遺伝子学者ピエールは、帰宅途中、ネオナチの暴漢に危うく殺されそうになった。ネオナチと何の関わりもないのに、どうして狙われたのか?やがて、自分が連続殺人事件に巻き込まれていると知ったピエールは、事件の謎と自らの研究課題であるヒトゲノムに隠されている秘密に命がけで挑んでいくが…。
 …という本書のあらすじは、実は裏表紙のそれをまるっと写したものなんですが(笑)。いつもなら、ハヤカワ文庫のあらすじのまとめ方に関してぽこぽこ文句をたれるところですが、今回に限っては何にも言いません。っていうか、むしろ「よくまとめたなぁ」と誉めたいくらい。
 曲者なのは「事件の謎と自らの研究課題であるヒトゲノムに隠されている秘密に命がけで挑んでいく…」という部分。「事件の謎」と「自らの研究課題であるヒトゲノムに隠されている秘密」が並列に語られているのに注意しましょう。そう、今回の話、この2つは別にリンクしているわけではありません、っていうか別々の話ッス。「ヒトゲノムの謎が陰謀を呼び、陰謀が連続殺人を巻き起こす」などとおっちょこちょいな読み人(例によってワタシ含む)が勘違いするのはまったくその人の勝手であると(笑)。
 でもなぁ、普通タイトルに「フレームシフト」なんて付いてたら、その遺伝子のフレームシフト理論か何かが物語の重要な鍵を握ると考えるのは、読者としてごく普通の反応だと思うんだが…。だのに、フレームシフト理論は語られるだけ(笑)。ハプレス・ハンナがらみで話が動き出したときには、ワタシの頭の中には「フレームシフト+ハプレス・ハンナ=映画『北京原人』の念力原人」という導出式がぽぽんと湧いて出てしまい、「おおっ、これは素晴らしき新人類の誕生かッ!?」と妙な期待をしてみたものの、この話も本編では傍流の1エピソードくらいの扱い。ネタのうっちゃり具合は『ターミナル・エクスペリメント』の魂以上。では本筋はどんな話かというと、フレームシフトやハプレス・ハンナが全くなくても成り立ってしまうナチの残党もののおはなし。なんちゅうか、話を構成する要素がてんでばらばらのまま、どんどん展開だけが先に進んでいってしまうような印象を受けるですよ。むむぅ。
 一番困ったのは、以上のように違和感を感じまくりながら読み進めていったにもかかわらず、それなりに面白く読めてしまったということ(笑)。終盤はハンチントン病のおかげで『アルジャーノンに花束を』のような効果が生じてしまっているし。なんだかラストは妙にさわやかだし。ついでに読後感もさわやかだし。ぬぅ。
 むーん…困った。面白い作品なんだが、小魚の骨がのどに引っかかったような何とも言えないもやもやも感じる…。ソウヤーが好きな人なら。

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