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F・ポール・ウィルスン の作品 『黒い風』 『ザ・キープ』 『触手(タッチ)』 『ナイトワールド』 『ホログラム街の女』 『マンハッタンの戦慄』 『聖母の日』 『神と悪魔の遺産』 |
『ホログラム街の女』 ハヤカワの青い背表紙に「F・ポール・ウィルスン」って書いてあると、なんだか物凄く違和感があるな(笑)。表紙絵を見ると、さらに違和感倍増。なんか今までのウィルスンのイメージとちゃうぞ。「ホログラム街の女」。ハヤカワミステリの棚に並んでてもおかしくなさげなタイトル。うむむ。大丈夫か…? …と思っていたら、今までの作風とは違うのはその通りだけど、意外や意外、こっち方面でもなかなかの作品でした。 この本の内容を一言で要約するのなら、「ちょっといい話」になるのでしょうか。第1部最後の主人公の粋な計らいとか、第2部での、主人公と<落し子>の少年との交流とか、第3部の展開とか。第1部では、シリアスでちょっとエグいパーネル・ホールな感じの、典型的な近未来ハードボイルドだなぁ、と思っていたら、次第に頭角を現してくるハートウォーミングな描写。第3部、もうハードボイルドちゃうぞ(笑)。 でも、それはそれ、これはこれ。これがまたいいんだ。この本、読後感はいい。すごく。考えてみれば、こういう爽快な大団円を迎える本って、久しぶりに読んだ気がする。「造物主の掟」(群衆がみんなでハッピー)やディックの「いたずらの問題」(マスメディア関連ってことで)など、いろいろと思い出してしまいましたよ。第3部はもうちょっと書き込んでもいいような気もしたけど、それでも、やっぱいいわ、こういうポジティブな終わり方は。 小道具のなかでは、やっぱり第2部の分子ワイヤが光ってる。第2部は、こいつのおかげで掴みがバッチリですな。笑えるよなぁ、痛いけど(笑)。あと、第1部の後半に出てくる護身用武器のザッパー、あれって、読んだ人全員、絶対同じこと連想すると思うぞ。マジンガー。 表紙絵やあらすじを見て、徹頭徹尾硬派なハードボイルドを期待していると揚げ足取られるけど、その辺りをさっ引いても面白い本。読みやすいからすいすい読めるし。おすすめ。 |
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