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F・ポール・ウィルスン の作品 『黒い風』 『ザ・キープ』 『触手(タッチ)』 『ナイトワールド』 『ホログラム街の女』 『マンハッタンの戦慄』 『聖母の日』 『神と悪魔の遺産』 |
『神と悪魔の遺産』 ニューヨークの小児エイズ・センターの女医アリシアは、父親から相続した屋敷のことで悩まされていた。屋敷には発明家の父親が隠した「何か」があり、それを狙って何らかの組織が動いているようなのだ。彼女にとって、悪夢のような思い出の残るその屋敷を処分しようとするアリシア。しかし、何者かの妨害工作が始まり、頼りにしていた弁護士は、なんとアリシアの目の前で爆殺されてしまった!追い詰められたアリシアは、しかしある日、小児エイズ・センターの盗難事件を通して、ある男の存在を知る。その男の名はジャック。<始末屋ジャック>。金でのみ働き、街の下衆どもを掃除する、姓もなく、社会的身分もいっさい消した、裏世界の仕事人である…! いやーびっくらこいた、遂に出たんだねぇ、<始末屋ジャック>が主役の長編。『マンハッタンの戦慄』で登場後、中篇『人生の一日』(エド・ゴーマン『罠』収録)なんてのを経て、『ナイトワールド』では助演男優賞ものの存在感を出してる、ウィルスンが作り出した最強のキャラクター、始末屋ジャック。ただ働きしないストイックなシティーハンターっつーか、アメリカン必殺仕事人。内に秘めたる衝動を、人の為に使うことでバランスを保っているタイトロープなヒーロー。ときどきいい子ちゃんなんだかニヒリストなんだかはっきりしてほしくなることもあるけれど許容範囲内(笑)。始末屋ジャック万歳! さて、そんな始末屋ジャックのカムバック作品となるこの『神と悪魔の遺産』だけど、『マンハッタンの戦慄』『ナイトワールド』みたいな前歴と、今回のタイトルから、またモダンホラー系の話で攻めてきてるのかと思いきや、まったくもって超常要素皆無なハードボイルドになってました。物語の鍵となる屋敷に隠された秘密はちょっとSF入ってるけどそれだけ(笑)。でも、始末屋ジャックはどのジャンルでも節操なく登場するのは『人生の一日』で証明されてるので問題なしッス(ちなみに『人生の一日』もモダンホラーちゃうです)。 というわけで、この本では、始末屋ジャックのプロの仕事っぷりを堪能しましょう。アリシアの父の秘密をめぐるジャックと敵の丁々発止のやりとり。アリシアの依頼を進めてる間にも、平行して他の依頼を2、3コ片付けちゃってるジャックが街の始末屋らしくてステキです。しかも依頼人のメンタルケアまで完備(笑)。男前だなぁ。 読んでみたらばデラックス版『人生の一日』みたいな話だったけどそれはそれ、始末屋ジャックの活躍が心行くまで堪能できるエンターテイメントでした。聞けば始末屋ジャックのシリーズはまだあと2つは控えてて、しかもどんどんホラー色が強くなってきてるらしいので楽しみ楽しみ。始末屋ジャックファンは買い。だって始末屋ジャックだもん(笑)。 |
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