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F・ポール・ウィルスン の作品 『黒い風』 『ザ・キープ』 『触手(タッチ)』 『ナイトワールド』 『ホログラム街の女』 『マンハッタンの戦慄』 『聖母の日』 『神と悪魔の遺産』 |
『ザ・キープ』 ナイトワールド・シリーズ第1作目。たぶん、映画「ザ・キープ」を見ていなければ、黒い風よりこっちを先に買ってたと思う。そう、この本、映画化されてます。ただし、映画のほうはとてもチープな出来だったので、原作であるこっちもついつい敬遠しちゃってました。 時は第2時世界大戦。領土拡大をはかるヒトラーの元、分遣隊の一つがルーマニアのトランシルヴァニア地方に派遣された。彼らは山間にある中世の城塞を占拠するが、ある夜を境に、惨劇が始まった。夜毎に兵士が殺されていくのである。厳重な警備をものともせず、人とも思えぬ殺し方をするのは何者か?恐慌をきたしたドイツ軍は、この地方に精通するユダヤ人学者クーダとその娘マグダを城塞に連行する。そのころ、遠く離れたポルトガルで、一人の男もまた、その城塞を目指し動き始めていた…。 ここんとこモダンホラーはご無沙汰だったのでどうかと思っていたが、なかなかの出来だったので一安心。僕がモダンホラーで一番数を読んだ作家といえば、悲しいかなクーンツになってしまうのだが、彼と違って作品の中で説教を展開しないだけでもプラス1点。それはさておくとしても、対立する正規軍の大尉と派遣されてきたSSの少佐、ナチスを憎むあまり異形の存在に翻弄されるクーザ等、登場人物たちがきちんと立っているのはよろし。背後に太古から連綿と続く力の対立があるという壮大さを感じさせる設定もいいねえ。なかなか読ませるエンターテイメント。考えてみれば、映画版の方も、ストーリーは割と忠実になぞっていたような気がするが、印象がこうも違うというのはどういうこっちゃ。やはり、活字の力のなせる技か。 ところで、モダンホラーでラヴクラフト系の禁書の名前(「アル・アジフ」とか「無名祭祀書」とか「エイボンの書」とか「屍食教典儀」とか)を見ると、妙な違和感があるな。読むだけで狂気の世界に陥るようなアブナイ本の数々を、そんな軽々しく扱っちゃあ…。 あと、この本をマンガで読んでみたいというヒトは、講談社漫画文庫の松本洋子『呪いの黒十字』を読んでみるとよろし。まるっきりまんまです。でもしっかり少女漫画してます。考えようによっちゃ原作よりも面白いです。しかもどこにもウィルスンの作品に対する言及はありません(笑)。 |
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