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アトラク=ナクア

『アトラク=ナクア』
対応環境:Windows95/98/Me/2000
ジャンル:ビジュアルノベル
発売元:アリスソフト
標準価格:2800円

関連リンク:
アリスソフト
つれづれなる電脳娯楽遊戯
女郎蜘蛛哀歌

 さてはて、純愛18禁ゲー「To Heart」をやってからこっち、周囲の人間は私をさらなる思想改造の道へと招こうとしているようで、つい先日、またしても半ば強引に「アリスの館456」なるものを押し付けられてしまったのだった。だ・か・らぁ〜、いくら傍目には堅物に見えなくもない(ほんとか?)私が、ふとしたはずみで巡り合った「To Heart」を激賞したからといって、「こじまくんも好きだねぇ」みたいな顔でほいほい次を押し付けないでくれぇ〜。
 …が、ちょっとうれしかったりして(核爆)。

 いや、「アリスの館456」に対する、私の主たるお目当ては、メカメカのシミュレーションっぽいRPG「零式」にあったのだ。こちらで「零式」の紹介を読んでからこっち、その機械臭の漂う世界にふらふらと引き寄せられていて、もし機会があれば、ちょっとやってみたいような気がしないでもないかなぁ、なんて思ってたりして。だって、私の好きなメカものなんですもの。ええいそこっ、その訳知り顔なにやにや笑いをやめんかっ!
 とにかくだ。わたしや借りるなり「零式」にとりかかったわけである。が、今回この場では、とりあえず「零式」は措いておく。だって、いちおークリアしたけどチャリオットフェスタ優勝できなかったしさあ、裏零式に突入するには程遠い戦果だったしさあ、だいたいあの主人公の倫理観念ゼロの蛮行姉妹(笑)は俺的にきっついしさあ。ぐすん。根気が続くときに、またやろうっと。
 しかーし、天はまだ我を見捨ててはいなかった。「アリスの館456」に収録されている3つのゲームの一、「零式」の気分転換にと始めたビジュアル・ノベル、これがぶっとんだ出来だったのである…。

「アトラク=ナクア」
傑作。

初音は、永い時間を生きる女郎蜘蛛。
人を食らい、精を食らって生きてきた。
宿敵・銀(しろがね)との戦いで深手を負った初音は
傷を癒すべく、人里に下り
とある高校に結界を張って棲みつく…。

 断言しましょう。傑作。素晴らしすぎ。
 毛色がまったく違う作品なので一概には言えないが、絶対値をとれば、少なくとも俺的には「To Heart」にも匹敵する。実際に起動するまで微塵も期待していなかった作品なので、衝撃力は甚大であった。一度ならず二度までも、この私を瞠目させる物語が、18禁ゲーのかなたからやってこようとは…。
 「とある高校に」棲みつく、というあたりで、「ああ、結局学園Hもののための設定かい…」と思っている貴方。それは半分は正しい(と思う)が、半分は間違っている。このビジュアルノベルの「ビジュアル」の部分は、学校の明るい面ですら、どことなく沈滞した感じを漂わせる。まずもって、普段の「絵」がいい、この作品は。雰囲気を損なうことなく、増幅してすらいるぞ。結構難しい芸当だと思うのだが、ついぞ場違いな絵には突き当たらなかった。
 人物がいい。特に、物語の要をなす、比良坂初音。全編にわたって暗い存在感を放ち続ける。うわべは古風に上品、が、その正体は、狙った人間を、少しずつ蜘蛛の糸に絡めるようにして己の異界へと引きずり込む女郎蜘蛛。躍らされる人間にははかなさすら漂う。逆らえないがゆえに。
 音楽がいい。押し付けがましくなく、作品の雰囲気を底辺で支える。静かめな音楽が多い。が、ラスト近くは静から動へ、音楽抜きではなりたたんというぐらいに、いい曲が多い。もしクリアしたら、MUSICモードでじっくりと聞きたい曲ばかり。特に、初音のテーマ曲「World」、それに「Atlach_nacha」の3アレンジ(特に3曲目「adoption」)がお気に入り。
 そして、シナリオが、最高にいい。「To Heart」みたく8極に散ることがないだけ、話に凝ることはやりやすいだろうが、一人一人がそれぞれに堕ちていく中盤過ぎまでの章でも、それぞれの話はよくできてるなあ、と思っていたら、知らない間に終局につながる伏線を張られていたとは。いろいろ書きたいが、こればかりはこれっぽっちも漏らすわけにはいかん。これだけは言っておくとする。ラストは、今までに見てきたあらゆるエンターテイメントの中でも、俺的最高級に位置する。貸してくれた友人が「せつない」と言っていた意味が、今分かった。轟沈。
 買え。やれ。驚嘆するがよいわ。

 …ふう。最後の方は蜘蛛に憑かれていたな、わしは。
 さて、一応18禁関係の事柄にも触れておくか(笑)。まあ、要するに初音おねーさまは人の精を糧にする妖怪さんなので、おいしそーな人間を自分の世界に引きずり込んでは、その、なんだ、ナニするわけですね。そっち方面のご期待にも添えるんじゃないでしょうか。私にゃ正直言ってどーでもいいことですが(笑)。どちらかっつーとアブノーマル関係っぽい(当たり前だって)のが多いんで趣味じゃないし。はっ、しまったつい本音を…(笑)。
 そんななかにも、一つ、印象に残った文。「抱いてほしいのに…」。これだけで、かなこの心のうちがこちらにもありありと伝わってくる。他愛ないが…。

 しかし、こう立て続けに18禁で高レベルのビジュアル・ノベルを繰り出されると、なーんで18禁でばかり良質のそれができるんだろうと考えずにはいられないなあ。わしが健全な(笑)世界のビジュアル・ノベルを知らんだけだろうか?

 ともかく、「アトラク=ナクア」は凄いです。「アリスの館456」、これと「零式」と「人間狩り」(←まだやってない。期待もしてないが・笑)とその他もろもろで9800円なら驚異のお買い得品です。度胸があるなら問答無用で買い。わたしゃ度胸がない上に恵まれた友人環境なんで買いませんが(笑)。

 総括。本に例えるならば、「To Heart」は、何度も読み返しては幸せにひたるような本。「アトラク=ナクア」は、一度読んだらしばらく開きたくもないが、心がえぐられて、いつまでも甘美にじくじくと刺激してくるような本。そんな気がする。

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