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久遠の絆

『久遠の絆』
対応機種:プレイステーション
ジャンル:シネマティックノベル
発売元:フォグ
標準価格:5800円

関連リンク:
フォグ
つれづれなる電脳娯楽遊戯
久遠に平安がいいな

 最後にONEをやってからこっち「ただラブラブなだけのビジュアルノベルなんてイヤァ」という思いを一層強固にしてしまったわたくし。思えば、本にしても、買う本買う本片っ端からSFとかモダンホラーだっちゅうことは、ワタシはどうやら、何であれ、どこかフツーでない要素が入ってないと満足できない体らしい(笑)。
 期待のホープ(なんのだ)を見渡してみると、リーフはホワイトアルバム以降、どうやら一般むけの方向(『コミックパーティ』が一般かどうかは多いに疑問だけど・笑)に回帰しつつあるようだし、アリスソフトに第2のアトラク=ナクアを望むべくもなく(あれは狙って作れる出来ではない、と思うわたくし)、タクティクスは座敷わらしのいなくなった庄屋屋敷っぽいし、こりゃKEYが「カノン」を出すまでは、おとなしく座して待つよりほかないか…と、思っていたのだが…。
 ある日、本屋で電撃プレイステーションを立ち読みしていたら、何だか妙にワタシの目を捕らえて離さない作品紹介が一つ。平安・元禄・幕末・現代と転生を繰り返す者たちの織り成す、恋と絆と闘いの物語を描くシネマティックノベル…。
 これや(笑)!
 ワタシの冥府魔道アンテナに強度の反応アリ。チェック項目…ストーリー…壮大そう。マル。登場人物…十二単とか着物とか巫女の服とか着てて雰囲気が出てる。でも主な舞台は現代。マル。BGM…そんなもん紙面から分かるかいや。保留。変におちゃらけてないか…心配なさそうだ。マル。切なそうか…個人的には転生ネタというのが若干引っ掛かるが、見た感じではかなりよさげ。マル。バケモノとか出たり血が飛び散ったりしているか…そっち方面も期待できそうだ。マル。
 総合評価…A。要監視対象也。だいたい昨今、こういうノリの作品に飢えているのだ、わたしゃ(笑)。コンシューマ機でビジュアルノベル系をやるのは疲れそうだが、この作品なら楽しませてくれそうだ…。なによりタイトルの音がいい。なにやら、悠久のわびさびを感じないか。感じませんか。そうですか。
 ともかく、発売日を確認したわたくしは、その当日、いそいそと行き付けのゲーム屋に向かったのだった…。

「久遠の絆」
主人公の通う高校に転校してきた謎の美少女
「高原 万葉」。
それを機に起きる数々の怪事件、甦る千年来の記憶。
輪廻の輪は、今再び…

…何でもいいけど、初期ロットが少なすぎだぞフォグ(笑)

 かようなわけで、入手にはとっても苦労させられた「久遠の絆」ですが、いやーその甲斐はあったっす。とりあえず14時間で万葉シナリオを終わらせたのですが、なかなかに骨太で楽しませていただきましたわ。
 なにより、今回の最大の収穫は、なにも18禁でなくとも、その気になればコンシューマ機でだって、面白いビジュアルノベルが展開できることがわかったということかもしれない。一時は「真に表現の枷が自由に外せて、制作者が思った通りの話が展開できるのは、18禁の世界だけなのかもなぁ…」とか思っていたのだけれど、なかなかどうして。期制の厳しいコンシューマでもここまでできるのなら、ビジュアルノベルの未来は明るいぞ(笑)!

 さて、肝心のゲーム内容ですが、全3章構成で、第1章が現代と平安、第2章が現代と元禄、そして第3章が現代と幕末が舞台。ごく普通の高校生だった主人公は、万葉の出現をきっかけとして不思議な出来事に巻き込まれ、少しづつ輪廻の記憶を取り戻しながら真相に近づいていくというお話です。ゲームシステムは凄まじく普通で、特にパソコンでビジュアルノベルの経験がある人ならば、操作には微塵も悩まないでしょう。わずかにゲーム中「法術戦闘」なる、五芒星の印を切って敵を攻撃するというミニゲームがありますが、ホントにミニゲームなので大勢に影響はありません(笑)。
 そういえば、某紙のレビュアーは、この「ゲームシステムに特徴的な所なし」という部分をあげつらって減点材料にしていたようだけど、それはちょっといただけないとおもうわたくし。ノベルは話の内容と演出勝負でしょう。っていうか、ノベルは読めればそれでいいんじゃこの痴れ者めが!って、落ち着け俺。アトラクだって、ゲームとしてみたら分岐なんてほとんどなくてショボイけど、それでも最高のビジュアルノベルだぞ。うーむ。
 毎度のことながら話がそれた。
 演出面はほぼ申し分なし。画面効果もなかなかだし、先に述べた法術戦闘も話のアクセントとして良し。BGMも聞いてて気持ちいい、うるさく自己主張しないBGMで、なんかサントラあったら買ってもいいかなという気になってしまいましたよわたしゃ。パソコンみたいにCD-DAっちゅう訳にはいかないからねぇ(笑)。絵の方はと言うと、相当にキレイだし、おなごはかわいいし、男はまぁ、それなりに(笑)。主人公の親友の有坂汰一なんか、ほとんど高校生離れした超絶ナイスガイな絵…(笑)。あと、主人公の絵があって、きちんと目線が出ているというのは、いつも18禁で、目が前髪で隠れている主人公ばかり見てきたこっちには、なかなか新鮮なものがありますですね。それからそれから、高原万葉も、鷹久(平安時代における主人公)の母も、髪型がロン毛にシャギー…この原画マン、絶対チヅルスキーだよ(笑)!
 肝心のシナリオは、これまたなかなかに壮大な設定で、輪廻転生を絡めてボリュームたっぷりに展開していきます。そう、ボリュームという点でいうと、今までパソコンでやってきたゲームも含めてナンバーワンかもだ。読みごたえありますぜ。
 ただ、これはこのゲームの最大の長所であり、同時に最大の短所だと思うのだけれど…全体と比して、
 第1章の平安シナリオの出来が良すぎ。
 わたしゃ万葉オンリーのシナリオの進め方をしていたので、平安で桐子や泰子寄りの話を進めたらどうなるか分からないけれど、この平安シナリオははっきり言って絶品であった。輪廻転生に頼ってない分、シナリオが丁寧なんですわ。

 舞台は、コネと家柄だけが全てを決する平安の世にあって、唯一実力で上に上り詰めることができる役職──陰陽師の世界。陰陽師の師、賀茂保憲の教えを受け、稀代の陰陽師との呼び声高い安倍晴明を兄に持ちながら、才能が開花せず、剣術に精を出すことしかできない落ちこぼれ陰陽師、安倍鷹久。ある日、いつものように修行を抜け出し、山に剣の修練に向かった鷹久は、森の奥で絶世の美少女と出会う。それが、彼と蛍との最初の出会いだった。

 と、さわりだけ述べて後は伏せる(笑)。ともかく、この平安シナリオ、ゲーム全体がこのノリで行ったら、俺はこのゲームに文句無しのオススメ印を付けるぞ、と思えたくらいによくできてる。天真爛漫なようで、それでいて芯に高貴で凛としたものを秘めた蛍、蛍を襲う怪異、陰陽師としての己の無力を痛いほど噛み締めながら、それでも蛍を護るために尽くそうとする鷹久、彼らを取り巻く人間模様…。そして輪廻の始まりとなる哀しい結末…。最後、「俺はただ、蛍に会いたいだけだ…」で、思わず泣きが入ったぞわたしゃ。このまま行けば、このゲームは稀代の傑作になるかも…。

 というほど世の中は甘くなくて、振り返ってみれば、ここがお話のピークだったかもだ(笑)。後の方も間違いなく水準以上ではあるんだけれど、なにぶん平安シナリオでガツンと一発かまされてしまったので、どことなく物足りなく感じてしまうというのが正直なところ。元禄編は「降魔退散!」の手刀のためだけに存在するようなシナリオだし。幕末編は葛城信吾と沖田総司のキャラクターが出色なのでいい感じだが。ラストの最終決戦のあたりでは、なんか、連載の続きすぎでネタが切れてきたジャンプの戦闘マンガのようなノリがそこはかとなく漂ってたりしてアレである。
 また、因縁の敵が、現代において、高校の不良グループのリーダーに転生してたり、京都への修学旅行を利用して最終決戦地へ赴く、とか、語尾にハートマークや、声が重なったときに「×2」とか付けられているのを読むと、分かっていても腰がヘナヘナと崩れてしまうのだった。うぅ。
 それでも、最後はきちんと落としてくれて(「死ぬのはイヤァ!」)、エンディングでは爽快にハッピーエンドで締めてくれたのでよしとするわたくし。単純である(笑)。

 以上、ちょっち辛口になってしまったけど、これは全体的な出来の良さゆえの小言だと思ってもらえるとありがたいなぁと思うのことよ。確かにいろいろ不満もあるし、最高、とまでは言わないけど、少なくとも、ワタシが「うっしゃー!!」と言って激賞するビジュアルノベルに肉薄する出来、と言っちゃってもいいと思う。それに、万人受けしないであろう内容と、コンシューマという土壌を考えたら、大金星の出来と言ってもいいかもだ。特に、パソコンでのビジュアルノベルの未経験者には断固推奨するッ!そうでなくともオススメだ。興味があったら入手すべし!

 しかし、絵的には万葉よりも、栞(しおり)の方が可愛いと思うのはワタシだけか(爆)。

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