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名古屋市立原中学校
つれづれなる…
同窓会長vsジュニアハイスクール

 ある平成12年11月01日、深夜1時30分…ベッドの上で布団に入ったままもの思いにふけるわたくし。

「あー、明日…つうか今日の朝にゃ、中学生の大群の前でなんかスピーチせにゃならんのだのう…何話そうかなぁ…うー…あー…ねむー…あー眠い。明日だ明日。明日考えよう。今日はもう寝る。おやすみ。ぱたんきゅー」

 …寝るなぁ!明日はもう無いぞ(涙)!

 でも、いかな同窓会長といえど、睡魔には勝てないのであった。意識ブラックアウト。きゅー。

 …今年、ワタシの母校の中学校が開校10周年だったそうな。おお、そりゃめでたい。ブラボー。そこまではいい。さらに、開校10周年を記念して、平成12年11月01日に記念式典が執り行われるそうな。まぁ記念式典といっても、偉いさんが何人かよくわからない話をして、校歌を歌えば終わる、っちゅう程度のもの。まぁ10周年だもの、それもありですわね。それも良しとしよう。さらに記念式典では、校長やPTA会長や同窓会長が列席して、それぞれの方々がそれぞれ、全校生徒が一同に会した体育館でスピーチを行うそうな。お約束ですわね。それも良し、と言いたいところではある。ワタシがその同窓会長でなければ。

 …俺か!? 俺が同窓会長なのか(涙)!?

 自分を誤魔化しても無駄である。全くもって忌々しいこと極まりないが、確かにワタシは名古屋市立原中学校の初代卒業生にして、肩書きも立派な、れっきとした原中学校の同窓会長なのである。ということはつまり、

ワタシは同窓会長→同窓会長は記念式典でスピーチ→ワタシが記念式典でスピーチ

 非の打ち所のない見事な三段論法。つまりワタシがすべきことは、
 当日ちょっと中学校行って、中学生総勢約600人+来賓+保護者の前で校長先生ばりによくわからないスピーチをして帰ってくる
ということですね。ついでにもう一つ三段っぽい論法を展開すると、

ワタシは同窓会長→ワタシはぼんくら学生→ぼんくら学生が記念式典でスピーチ

 …俺に死ねと言うのか。

 普通、同窓会長っていったらいい年したおぢさまというのが相場だと思うが、もうお分かりの通り、ワタシの中学校はできてまだ10年なので、立派な同窓会長になれそうな、ワタシより年上のOBなどいやしないのだった。で、最大の疑問、何故ワタシが同窓会長なんぞに任ぜられたかという問いに対する答えは、ワタシがまだ中学生だった頃、中学校の卒業式その日にさかのぼりますです。当時ワタシは学級委員長だった…。

 卒業式後、生徒会の顧問の先生に呼ばれて集まった、ワタシを含む各クラスの学級委員長たち。顧問の先生、ワタシたちを前にして曰く、

顧問「えーと、あなたたちがこの学校初めての卒業生だから、この学校にはまだ同窓会もないし、同窓会長もいないの。とりあえず同窓会長決めなきゃダメなんだけど、あなたたちの中で、誰か同窓会長をやってくれるヒトはいないかな?」

わし(中学生)「はーい」

顧問「あら、じゃあ小島くんよろしくね」

わし(中学生)「はーい」(←自分が何を引き受けたのかよく分かっていない)

 …よく考えてから返事をしろ当時のオレ(涙)!
 ちなみにこの「同窓会長」という肩書きは、かつて一度「全然知らない先生の葬式に来賓として呼ばれる」という災難を引き起こしています。マイクで「同窓会長・小島修一様、ご焼香です」とか名前読み上げられたりしてました。もう勘弁してほしいデス…(涙)。

 まぁとにかくそんなこんなで、記念式典でスピーチすることになったわたくし。でも冒頭でも触れた通り、わたしゃ前日になってもまだ何話すか全然決めてなかったですよ。最初から原稿を用意するつもりはなかったとはいえ(原稿の棒読みはヤだった)、これはあんまりでわ…(笑)。

 当日、朝起きだして、スーツにネクタイと、一応バシッと同窓会長らしい装いでキメるわたくし。馬子にも衣装。まぁとりあえずてくてくと中学校に向かうことにする。自宅から歩いて10分ほどのところ。
 中学生のころいつも通っていた正門ではなく、学校の正面玄関が来賓受付。まさか正面玄関から来賓として母校に入る日が来ようとはねぇ…っていうかわし同窓会長だから来賓じゃん。来賓。よくわからないけどなんか神々しい響きだぞ来賓。スバラシイ。どうやらもうプレッシャーで何かがどこかでおかしくなってるらしいわたくし。
 受付後、教頭先生じきじきの案内で来賓控え室(視聴覚室だった)に通される。ワタシはかなり早い時間に到着したらしく、その時には部屋には人もまばらだったが、じきに三々五々人が入ってきて混雑しだして…えらそうなおぢさんとPTAのおばさんで部屋が満杯に。なんつーか、学校ムラ社会の縮図を見ているような気分になるなぁ。ちなみに、ワタシの目の前には、学区長のヒト警察署の保安課長のヒトがいました。二人でおしゃべりしました。保安課長…「ここに配属になる前は、沖縄サミットで警備を担当していた」とか言ってるし。こわいようこわいよう。あと、この部屋にいるときに、
 「○○さん、今日は一段とお綺麗で」
 「まぁ、お上手ね」
などという、現実世界では絶対に聞けないと思っていたやりとりを実際に聞くことができて大いに感動する。PTAってこわいなあ。

 そんなこんなのうちに時間になって、会場の体育館に移動するわたくしたち。げぇ…想像の倍ぐらいの人数がいるんですけど…。ワタシはその光景を見て腹をくくって落ち着いた…と言えれば格好の一つもつくが、実際は単にビビりまくってました(笑)。中学生たちにしてみたら、わたしゃ「同窓会長」という肩書きがついてるだけの、ただの来賓のひとりに過ぎないが、来賓は来賓というだけでエライのである。お、俺は来賓らしく立派に振舞わなければならんのでわないか!? 既に自分で自分によくわからないプレッシャーをかけて自滅モードに入りかけているわたくし。違うんだよ!君たちが見てるのはただのぼんくら学生なんだよ(笑)!
 ちなみに、今日この場でスピーチするのは、順に、現校長、PTA会長、同窓会長、初代校長。まことに不本意ながらビッグ4の仲間入りである。泣きそう。

 来賓席に座ったら式典開始。開式の辞の後、現校長、PTA会長がそつなくよくわからないスピーチをこなしていく。かたや来賓席でもう生きた心地がしないわたくし。目の前にいる中学生たちは、スピーチが終わるごとに座ったまま一礼。ああ…礼儀正しい青少年たちだなぁ…。
 もうここまで来てしまったらしょうがないので、頭の中で爆心地のようにとっ散らかってるスピーチ内容を確認するわたくし。残念ながらもはやお上のヘタレ教育方針をネタにするようなココロの余裕がないので、最後の手段、自分をネタにすることに超決定(爆)。切羽詰まりにも程があるぞオレ。っていうかちゃんと余裕を持って前日までに話す内容をまとめておけよオレ(涙)。

 「続きましては、同窓会長、小島修一様のお話です…」

 あーついにワタシの番か。どうってことない、てくてく壇上まで上がっていって何か話して降りてくりゃいいんだろ。簡単じゃないか。だのに何で膝に力が入らないデスカ?何で手が末期アル中患者のように震えてるデスカ?ええい情けない、ほら歩く、体育館両サイドの来賓にそれぞれ一礼、それから壇上に上がる、中学生ン百人+来賓+保護者に向き直る!ほうら、ここまでは簡単。問題はここからなんだけどな。

「えー、おはようございます。同窓会長の小島修一です」

 ほら言えた。これも簡単。この調子で会衆のココロをゲットするんだ!まずは一発時事ネタを織り交ぜて…。

「お話の前に、まずは、合唱部の皆さん、全国合唱コンクールでの金賞受賞、おめでとうございます。えー…僕も在学中は合唱部だったので、先輩としても嬉しい限りです。本当におめでとうございます」

 うん、いい感じだ。原稿を読み上げるだけだった先の二人と比べて、時事ネタを入れることで差別化を計ると同時に、同窓会長というお偉いさんという立場ではなく、生徒のみんなと同じ側に立ってるということをさりげなくアピールできてるぞ。ワタシの精神の平穏のために、そういうことにしておいてください(笑)。ちなみにワタシが合唱部だったというのは本当。コンクールが近づいた時だけ急遽結成される即席合唱部だったけど。とにかく、今後もその調子で…。

「さて、本来ならここで何かタメになる話でもすべきなのでしょうが、残念ながら僕はいまだ24歳、皆さんとは10歳ほどしか離れていないので、そういう話はできそうにありません。そこで今回は…」

 ああっ、いきなり何を言い出すオレの口(涙)!「ありません」じゃねぇだろ!いきなり「人生の先輩きどりで含蓄たっぷりに何かを語る作戦」、大瓦解。「そこで今回は」!? そこで今回は、何を言おうというんだ!?

「…そこで今回は、皆さんのとある先輩が、この学校を卒業してから、どういう人生を辿ったのかをお話ししようと思います」

 何を言っているんだオレ!さりげなく「とある先輩」とか言いつつ自分を語るモードに入ってるし!スピーチする前は、とりあえず「型にはまったスピーチはすまい」という方針を立ててはいたが、既に何か型をはみ出すどころか明後日の方向に飛んでいく寸前になってるぞ。この時点で俺スピーチ、アウト・オブ・コントロール。もうどうにでもなれ。ちなみに、この辺りから、会場から中学生のクスクス笑いが絶えなくなる。まだ何も面白いことは言っていないよ(涙)?

「僕はこの学校を卒業してから高校に入りましたが、勉強はなかなかうまくいかなくてですね…数学で、のび太くん以外実際にはまず取らないであろう0点なんて点を取ったこともあります」

 0点を取ったことがあるのも実話だったりしますが(爆)、それ以前に…言うに事欠いて、よりにもよって「のび太くん」…。

「でも僕は、本が好きだったんですよ。勉強そっちのけみたいな感じで…まぁとにかくたくさん読んでたんですよ。でも本って言っても、『路傍の石』とか『坊っちゃん』とかの真面目なやつじゃなくて、『ジュラシック・パーク』の原作とか、『エイリアン・地球殲滅』とかいうどうでもいいものばっかりを。SFとか特に好きなのでそればっかり読んでたんです」

 「何かインパクトのある本のタイトルを(0.1秒)」という脳内検索の結果出てきたのが、何故かスティーヴ・ペリー…何も『エイリアン・地球殲滅』でなくても…。っていうかそれより、これを実際に中学生ン百人+来賓+保護者の前で喋ったという事実の方が恐ろしいですな。さりげなく「SFが好き」なんてカミングアウトしてるところもポイント。中学生ン百人+来賓+保護者の前で。

「でも、それは無駄にはなりませんでしたよ。大学に入ってから、今まで読んできた本の感想をホームページに書き始めたんです。まぁ読書感想文ですね。そうしたら、だんだんその感想を読んでくれる人が増えて、それをきっかけにいろんな人と知り合いになって、ついにはその関係でお仕事をするようにもなりました。というわけで、僕は現在、オンライン書店ビーケーワン…インターネット本屋さんですね…そこでSFの書評を書いてます」

 なんか「消防署の方から来ました」的誇大表現が入ってるような気もするが気にしない。少なくともウソは言ってないし。bk1の話は最初は出す気はなかったんだけど(っていうかアンタ、話を出すのもおこがましいぺーぺーの新米じゃん)、なんかこれを言っておかないと、スピーチ全体がただの本好きの与太にしか聞こえない気がしたので急遽挿入。森山さんゴメンナサイ(笑)。

「つまり何が言いたいのかというと…」

 …と、ここで強引にまとめに入るわたくし(笑)。

「…何が言いたいのかというと、好きなことを見つけて、それを思いっきりやれば、人生けっこうなんとかなるという教訓に満ち満ちたおはなしです。好きなことが見つかれば、人生楽しく暮らせます。学歴とかいろいろ取っ払った時に、最後に残るのはそういう好きなことです。好きになれることを見つけましょう。そうすれば、少なくとも向こう10年間は楽しく暮らせます」

 そしてたどり着いた結論は、とてつもなくアバウトで掴みどころのないものだったのだった。支離滅裂。素直に「趣味を持とう!」ではダメだったのか(笑)?「取っ払った時に」のくだりでは、手が何かを取っ払うようなジェスチャーをしていたような気もするが気にしない。よく考えると凄まじく無責任なことを言い放ってる気もするがもうどうでもいいです。っていうかワタシは早くこの壇上から降りたい。

「というわけで、以上を持ちまして、同窓会長としての挨拶、先輩からの助言とさせていただきます。ありがとうございました」

 終わった…とりあえず終わった…こういう記念式典という場の挨拶としては型破りな挨拶…というか結局何が言いたかったのか喋った本人にもさっぱりわからない挨拶が終わった…。ほら締めだ。一歩退いて一礼。

 …ぱち…ぱち…ぱちぱちぱちぱち…

 拍手?

 ワタシが一礼すると、中学生のみなさんの間から拍手が巻き起こったのだった。校長先生やPTA会長の話の時には一礼しかしなかった人たちが。

 ウケた(笑)!

 とりあえず、俺スピーチにおける最低目標「偉いさんたちの話で退屈している中学生にひとときの息抜きを提供する」は見事に達成された模様。どこがどうウケたのかを考え始めると悲しくなるのでやめておくが、とにかくウケたので良し。同時に、教師とPTAは全員敵に回したような気もするが(笑)。
 なお、実際の場では一応アガりまくっていたので、文字で読むほどスムーズに話せたわけではないこと、さりながらここに書いたスピーチ内容はほとんど本番と同一であるということを、この場を借りて申し添えておきますです。ええ、のび太くん地球殲滅SFが好きも全部ホントに言いましたともさ。もう世間様に顔向けできません。向けてますが。

 後はもう野となれ山となれ。お役御免になれば気楽なもの。全国レベルで金賞取った合唱部の合唱を聞いたり(確かにこれはマジ上手かった)、その後の文化祭(記念式典は文化祭の冒頭で行われたのですね)では、各教室の展示物を見回ったり、懐かしさ余って展示物のないところまで見回ったり、体育館で生徒演目のパラパラ風ソーラン節とかいうユニークなものを見たりして帰ってきましたとさ。

 ただ、少し気になることがあったりなかったり。

  • スピーチ後、教室の展示物を見回ってるときに、廊下で生徒とすれ違うと、ときどき「あれがあの同窓会長…」とかいう台詞が風に乗って聞こえてきた
  • 体育館の入り口には、先の東海地方を襲った水害義援金の募金活動をしている女生徒たちがいたのだが、ワタシが前を通るたびに、普通の倍ぐらいの気合で募金をお願いしてきた(そしてその横で顧問の先生が恥ずかしがっていた)

 …どんな形であれウケたまでは良かったが、おかげで何かよろしくない副次的効果が発生してる気配が(笑)。きゅー。

 あともう一つ。帰りがけに、教頭先生と、今後の同窓会運営に関して簡単な打ち合わせをしたのだが、その中で教頭先生語って曰く、

 「いやー、この学校初の同窓会になりますからねぇ。大規模になりますね

 …スピーチ、今後も練習しておいた方がいいのかもしれない(涙)。同窓会長の肩書きがもたらす災厄はまだまだ続きそうではある。しくしくしく。

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