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一発小咄・ちいさなメッセージ

 ある土曜の夜。私はいつものように、最近唯一まともに見ているテレビ番組である、NHK夜9時の「ER」を堪能し終えたところだった。いきなり余談だが、ERはおもろい。既に放送は第1シーズン後半だが、見て損はないぞ。スイフト部長(マイケル・アイアンサイドだった)、結構いい奴じゃん。それはともかく、ERが終わった後も、私はしばし惰性でNHKをつけっぱなしにしていた。そのとき、それは始まった。

 「ちいさなメッセージ」

 いきなりセピアなマクドナルドCM風の画面に、なんだなんだと思う間もなく、ミニドラマは始まってしまうのだった。

 いつものように小学校から下校する少年。あるとき彼は、前で女子高生が騒いでいるUFOキャッチャーの中の景品に、あるものを見つけた。クマの人形だ。まだ指しゃぶりをするほど幼かったころ、昼寝をする彼の傍らにはいつもそれと同じクマの人形があった。思い出の染みついたクマの人形。彼は、いつか自分がそのクマを手に入れることを誓う。しかし彼にはUFOキャッチャーを遊ぶほどの金はない。
 その日から彼の努力は始まった。親の豆腐屋の店番を手伝い、親の代わりに出前に出かけ、父の肩をたたき、そのたびに駄賃の10円をもらい、貯めていった。そしてついに母親に両替を頼む彼。貯めた金額は、200円になっていた。
 汗と涙の結晶の200円を握りしめ、UFOキャッチャーの前に走る彼。投入する100円にすべてを賭け、キャッチにトライする。しかし1回目は惜しくもハズレ。残りはあと100円だ。しかしそのとき、心ない大人がそれと気づかず彼を引っかけて転ばせてしまう。彼の手を離れた100円玉は転がっていき、無情にもドブの中へ。少年はコンクリのふたを持ち上げようとするが、所詮は子供の力、持ち上がるはずもない。
 しかし神は少年を見捨てなかった。必死の少年の回りに次第に広がる、人々の輪。皆が少年を応援する。最後には大工までが駆けつけ、大人の力でふたを取り除くと、100円玉をすくい出してやるのだった。
 UFOキャッチャーの回りに群がる人々の願いを背負い、2度目のトライを行う少年。人形たちも少年の想いに答え、クマだけでなく、ほかの人形もみな手に手を取り合って、一緒につり上がってきた。ついに思い出のクマを手に入れた少年は、腕いっぱいの人形を抱えて家路につくのだった。

 私だったら、さんざん苦労してすくい出してやった100円玉を、UFOキャッチャーに持っていかれた時点で怒ると思う。

 「ベイブ」でも使われていたであろう人形のモーフィング技術を、もっと別のところに使おうとは思わんかNHK。「こんなガンバルを応援します。NHK」ってあんた、それだけを言いたいがためにこのミニドラマを…。「ストレッチマン」や、最強メタ道徳SFドラマ「虹色定期便」を作り出したNHKの、よくわからない底力をまたかいま見たような気がした。

 それだけの話なんです。終劇。

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