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- あんなもん放送してるなんて、こっちが知るわけないじゃないかぁ…。
- その日は、バイトのみんなで、焼き肉食い放題に行ったのだ。男はワタシともう一人の2人、女は3人。みな妙齢である。全員、90分の時間制限いっぱい死ぬ気で食う気でいた。ビール党のわたくしとしては、生ビール中ジョッキの一杯や二杯ひっかけたいところではあったが、残念極まりないことに、バイトの中で唯一自由に車を動かせる人間であったワタシは、その3人の婦女子を車で送り迎えするという崇高な責務を負っていたのだった。いかなビールといえど、さすがにまだ飲酒運転をする勇気はない。
- が、後に起きたことを考えると、そこで多少飲んでおいた方が良かったのかもしれない。
- さて、思う存分焼き肉を食い荒らし、いよいよお開きになった焼き肉パーティ。時間はすでに午後10時を回っている。もう一人の男は、自分のバイクで店に来ていたので、彼は爆音とともにさっそうと去っていった。ワタシの元に残るのは、妙齢のおなご3人。両手でもあまる花である。ちょっとうれしい。
- さっそうとドアロックを解除し、彼女らを車内へといざなうワタシ。心なしか、愛車のカリーナなんちゃらエクストラも嬉しそうである。エンジンをかけ、さっそうと食い放題の店を後にするカリーナ。ミッドナイトの道路を疾走するカリーナ。女の子のうち二人は自動車学校で車の運転を学んでいる最中なので、ワタシの運転でも感心することしきり(「やっぱり、長い間乗ってると運転がうまーい」)。その声を聞きながら、かなり気分が良くなるわたくし。
- が、後に起きたことを考えると、そこで気を引き締めて、もう少し気を配るべきだったかもしれない。
- 運命のイタズラは、すぐそこまで迫っていたのである…。
- 道半ばまで来た頃、その時まで流れていた落語の番組(爆)に嫌気がさし、何の気無しにカーラジオを別の番組に切り替えたとき、ワタシの耳は忌々しいことに、切り替わった番組にただならぬものを感じ取った。
- 察するに、どうやらラジオドラマらしい。男と女がドラマらしく会話を交わしている。が、ちょっと様子がおかしい。男女とも声が妙に深刻だ。胸のうちで、要らぬ好奇心がむくむくと頭をもたげてくるわたくし。
- 女の子A:「なに、これ…?」
- ワタシ:「ふーむ、もうちょいと聞き続けてみるとするか…」
- 好奇心に呪いあれ。
- というわけで、もう少し聞き続ける我々。だんだん内容が分かってくる。声が深刻なのも当然。どうやらこれは、「失楽園」なラジオドラマらしいのだ。女の方が「奥さんと別れてくれなくてもいいの、ただ貴方と一緒にいたいだけ…」とか、なんかその手の常套句言ってたりするし。
- しかし運転の方に気を配っていたワタシは、手持ちぶさたな他の同乗者と違って、ラジオに耳を澄ませていた訳ではなかった。ラジオの音声は、ワタシにとっては背景音の一つに成り下がっていたのだ。つまるところ、切り替えた方がいいな、と思えるほど集中して聞いてはいなかったということである。その時はまだ呑気に、さすがにちょっとナンだから、そろそろ別の局で音楽番組でも探した方がいいかな、などとぼんやり考えていたのだった。
- この時、多少おっくうでも、すぐに手を伸ばして局を切り替えておけば…!
- が、時既に遅し。
- ラジオからの音声は、深刻な男女の声から、急速な転調を見せはじめた。ラジオの音の方に意識を振り向けた瞬間、ワタシは、そこから流れる音に凍り付いた。
- 「ああん、あん、○○さぁん、あん、うぅん、ああ、もっとぉ…」
- まごうことなき女性のあえぎ声、いやもうこれはよがり声(爆)。
- 普段ラジオなど滅多に聞かないわたくしは、まさかラジオドラマでこんな種類のものまでが流れるとは夢にも思っていなかったのだった。
- 凍り付いたような静寂に包まれる車内。とりわけ純なおなご3人。局を切り替えようにも、運悪く道はカーブに差し掛かり、ハンドルから手が離せないわたくし。そんな中、車内に響き渡る男女の嬌声。
- 夜更けの道を疾走するカリーナ。
- 好奇心に呪いあれ。
- いま、新聞のラジオ欄を見てみると、その時間帯には、
- ノベルス「失楽園」(爆)
- という番組がやっていたらしい。ああまったく。なにが失楽園だぁ!顔から放射能火炎が吹き出るほど恥ずかしかったぞ!日本人の貞操観念と放送倫理の衰退を嘆かざるをえない昨今であった。嘘。
- しかし、いくら失楽園がブームだかなんだか知らんが、あんなもんを公共の電波に乗せて良いものなのだろうかと思うことよ。なんか、映像より遥かに生々しい(核爆)のですが。ふぅ。
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